信州を世界に誇る山岳リゾートに
アルピコHD(297A・S)が12月25日、スタンダードに新規上場した。長野県を中心にスーパー、バス、鉄道などを展開している。初値は公開価格を5.2%上回る201円だったが、26日は買いが殺到し、ストップ高(50円高の241円)と急騰した。上場当日の記者会見で、佐藤裕一代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
売上高は流通中心
長野県中心に流通、運輸、不動産、観光事業などを展開している総合生活関連企業グループ。ホールディングスを親会社に子会社10社、関連会社1社がある。売上高の75%がスーパー「デリシア」を中心とした流通事業だが、営業利益に占めるシェアは流通54%、運輸29%、観光12%で、今後は運輸、観光が重要な戦略と位置付けている。
訪日外国人増加は構造的な強み
事業の強みは長野県・信州の人気の高い観光地で事業を展開していること。長野県は元来のポテンシャルに加え、訪日外国人客を中心に来県者が順調に増えている。われわれは一過性でなく、持続可能なものと考えている。上高地という有名観光地のある松本市や、白馬エリアでの外国人客数は新型コロナ前を上回っており、その需要をしっかり捉える。また、事業では小売りが一番大きなセクターで、キャッシュを創出する力が大きい。このキャッシュを運輸、観光に振り向ける投資、経営資源の確保が十分でき、資金の適切な循環ができている。コロナ禍では3期連続赤字となったが、その間、小売業が下支えした。多角的な事業をしており、裁定がうまくいく事業ポートフォリオになっている。それから2007年に私的整理を行い、金融機関の支援があって、バランスシートが良い状況になっている。
スーパーは新型店舗投入で成長
今後の成長戦略だが、流通事業については「デリシアミールズ」という(総菜強化型の)新たな店舗フォーマットを昨年から展開している。長野県は独居老人、共働き世帯が増えており、食材を買うことに加え、食事そのものを買い求めるお客様が増えているので、開店以来業績は非常に良く、改装資金も短期で回収していく。また、中山間地域の残存人口は今後も見込まれるため、移動スーパー「とくし丸」、「デリシャスネットスーパー」を重要な手段として、商圏エリア内のシェアを高めていく。運輸事業は観光路線バスを強化する。上高地エリアは4月にオープンして、11月に閉山、白馬便は12月に運行を開始した。夏期に上高地に投入した資源を冬は白馬エリアに投入しており、両地域とも独占的に事業を展開している。
ホテルは大規模改修続々
観光事業については、ホテルを6施設運営しており、高付加価値化を図っていく。人手不足への対応にもなる。上高地のホテルは今年の冬に大規模改修して、前年を上回る大きな売上高を確保した。上諏訪温泉、松本市のホテルを今年度から来年度にかけて大規模改修。松本市の美ケ原温泉のホテルは25年度から26年度に改装する。調達資金のうち11億円はデリシアミルズの新規出店、8.8億円はバス車両の購入、ホテルの改装に2億円充てる予定。「世界に誇る山岳リゾート信州」の構築への貢献を考えている。まだまだ長野県は開発の余地があり、地域のポテンシャルは高く、資本、資金を投入することで成長戦略を描きたい。
私的整理からちょうど17年目が記念する日に
07年12月25日に私的整理を発表した。社員に説明すると涙を流す人もいた。ちょうど17年後の同じ日に上場し、会社が生まれ変わった証左をいただき、安堵感とともに今まで17年間会社を支えて苦労された関係者の皆さま、社員の皆さまに厚く感謝している。(HS)