インバウンドプラットフォーム(5587)が8月30日、東証グロースに新規上場した。訪日外国人などにWi-Fiルーターのレンタルを行うほか、在留外国人の生活サポートやキャンピングカーのレンタルなど展開。初値は公開価格を37.8%上回る2,551円。上場当日の記者会見で王伸代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
外国人を対象に様々なビジネスを展開……主に訪日外国人向けだが、在留外国人に対しても展開している。日本に住んでいる外国人は300万人を超えるが、外国人の受入れインフラという面で見ると不足している部分が多々ある。われわれのサービスを通じてこうした不便を解消し、1人でも多くの外国人の方がより日本を好きになる、日本にまた来たいと思っていただけるような思いを込めて、私たちのビジョンは「また来たい、日本」と掲げている。事業は3つ。主力はWi-Fi事業で、売り上げに占める割合は前期で大体6割、足元では訪日外国人の増加により約8割まで増えてきた。ライフメディアテック事業はコロナ禍で始めた新しい事業で、在留外国人を対象としている。日本に住んでいる外国人は言語の壁や情報の非対称性で、本来受けたいサービスに上手くアプローチできない。そこでわれわれがしっかり情報を発信して、かつそのサービスに弊社のコンシェルジュが取り次ぎ手数料を収受するビジネスモデル。前期で売り上げのおよそ3割、足元だと約15%の水準にいったん縮小している。3つ目はキャンピングカーのレンタル事業。
インバウンド増で業績回復……2019年9月期までは訪日の売り上げだけだったが、コロナによって20年9月期は減収・営業赤字となり、ここから立ち上がるために在留外国人向けのサービスをスタートした。売り上げ、利益とも徐々に回復させ、23年9月期は訪日客が戻ってきたことでWi-Fi事業が大きく伸びている。一方で、思った以上に訪日の回復が早かったということもあり、ライフメディアテック事業のリソースを一部Wi-Fiの方に振り分けた。そのため今期のライフメディアテックの売り上げの割合は大きく落ちるが、体制をしっかり整備して来期は再び伸ばしていきたいと考えている。利益率も今期に関しては15%ぐらい、この第3四半期(4~6月)に限って言うと17%超えるような水準まで戻ってきた。外国人向けサービスは利益率が高く、訪日外国人の増加が利益率を押し上げている。
強みは「外国人に特化」……Wi-Fi事業では大きく2つブランドを持っており、1つは外国人向けの「JAPAN WIRELESS」。もう1つの「Global Mobile(グローバルモバイル)」は日本人向けのブランドであり、国内企業のリモートワークや海外出張ないしは海外旅行のためのWi-Fiレンタルを行っている。他社もいわゆる訪日対応というのはやっていると思うが、われわれはWebサイトの作り方にすごくこだわっている。日本企業が多言語対応する場合、通常は日本語サイトを作ってそれを翻訳していくという作り方になる。しかし、それだとニュアンスが違ったり商習慣が違ったり、見ていて違和感があるものができてしまったりすることが多い。われわれの場合はネイティブのデザイナーやエンジニアを社内で雇用しており、最初からそれぞれの言語でWebサイトを作っている。さらに、自社でコールセンターを持っているので、カスタマーサポートに関してもネイティブ同等の水準でできる。
事業の持続的成長サイクルを構築……われわれのように全ての事業で外国人やインバウンドに特化している企業はいない。主にWebページでタッチポイントを作って、そこで顧客を獲得するビジネスモデルだが、これには多大なシステム開発が必要。われわれはこれまでバックエンドのシステムを数多く立ち上げてきているので、それがプログラムとしてかなりパッケージ化できている。さらに様々な国に対する効率的なマーケティングも熟知している。新しいサービスラインを少ない投資コスト、短い期間で立ち上げて軌道に乗せることができるので、本来なら採算が合わないようなものにもどんどんチャレンジできる。また、オウンドメディアで効率よく顧客を獲得できるほか、コールセンターは一切外注を使わず全て自社でやることによって、社内のいろんなサービスのクロスセルをスムーズにしている。ノウハウを他のサービスに横展開することも可能だ。
成長戦略……既存のWi-Fi事業をさらに拡大していきたい。国内において訪日外国人向けのWi-Fi市場としてはある程度のシェアを獲っていると思うが、ここをさらに伸ばしていくためには各海外のブランドが競合となる。そういったところを今まで使い続けているお客さまに対して、われわれのサービスをしっかり認知させる。そのうえで、通信やサービスの品質には非常に自信を持っているので、1回でもわれわれのサービスを使ってもらえばリピーターができる。もう一つが新規事業への投資。ここはライフメディアテック事業の中で考えている。いま手掛けているサービスはどちらかというと、短いスパンですぐ取り次いで、すぐマネタイズできるようなものが多い。今後は外国人が日本で困っていてかつマーケットが広いところでいうと、就職斡旋(あっせん)や教育、冠婚葬祭などに進出してきたい。こうした領域は専門性も高いし、一件ごとの取り次ぎが長期化しやすいので、どちらかというと先行投資型にはなるが、ここに着手していって日本国内のマーケットをもっと押さえていきたい。目先ではマーケティングの投資、その中でも大きくはWi-Fi事業における認知型の広告などに投資していく。規模は来期で約5,000万円、再来期で約1億円。さらに一部獲得型の広告についても投資しようと思っている。もう一つはシステム開発の部分で、来期と再来期にそれぞれ1億円の投資を予定している。(SS)