インフォメティス(281A)が12月9日、東証グロースに新規上場した。AIで電力利用を効率化するエネルギー最適化ソリューションを提供。初値は公開価格を8.06%下回る993円だった。上場当日の記者会見で只野太郎代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
エナジー×AI×LIFE(暮らし)
2013年にソニーから知財の譲渡を受けてカーブアウトした会社。その技術(AI)を使って電力データを役立てるサービスを複数リリースし、事業基盤を構築してきた。ミッションの「エネルギーデータの力で、暮らしの未来を変えていく。」には大きく2つの意味があり、1つはエネルギーデータの活用により脱炭素に貢献していく、もう1つはこうしたデータを使った安心して暮らせる町づくり。不在配達の解消、自然災害対策といった脱炭素化にとどまらない“暮らしの利便”に資するような価値を創出する。
機器分離推定技術NILM
NILMは非侵襲、メスを入れずにその負荷を解析するという意味であり、全体電力を見るだけで電力の細かな1つ1つの内容を推定できる技術。電力会社が計測する30分ごとの電力量データから解析することも可能だが、より細かいデータになるほど私どもの技術が生きる。例えば、電子レンジが600ワットで30秒動いた、テレビが何十分つけっぱなしであるといったレベルまでほぼリアルタイムで推定できてしまう。
電力の用途内訳が分かると異常解析に活用が可能な上、昨今スマートグリッドで課題となっている需給バランスの最適化、ここに欠かせない予測技術に私どもの技術が役立つ。また、欧米各国では高齢化社会の中で安心して暮らせるようなIoTソリューションとして、見守りサービスや健康医療、保健サービスといったところまでエネルギーデータの活用が期待されている。
地固めは完了、黒字拡大へ
サービスの種類としては、NILMを使って細かいデータを分析する「スタンダードサービス」、今も昔もある30分の電力量値を使った「ライトサービス」、電力会社向けに電力値を最適化したり、需給バランスや収益を改善する「エネルギー・マネジメントサービス」の3つ。サービスの拡大とともに加入者数およびARR(年間経常収益)は順調に増加し、売り上げ成長もさることながら、経常利益の推移では研究開発フェーズから収益化フェーズに変わってきた。9月末時点で既に黒字化が実現。収益基盤が確立した。
2026年に大きな潮目
皆さんの家に付いている電力料金メーターは、10年前からネットワークで検針ができるようになった。これをスマートメーターと呼ぶが、10年毎に新しくしていかなければならず、26年から順次、次世代のスマートメーターに置き換わっていく。この10年間で電力量の細かいデータを集めて解析し、AIを育ててきた企業は当社しかいない。世界を広く見渡しても私どもの技術は最先端、トップで戦える技術力を持っている。
次世代スマートメーターの計量部には高精細な電力計測方式が仕様化されており、私どもが得意とする高精細な電力データが取得できる。非常に大きなアドバンテージを持ったデータ分析が広げられるようになり、日本全国に貢献することはもちろん、日本発のデファクトスタンダードとして世界でも大きなスマートグリッドの進化を示していける。
欧州に成長の種
海外においても大きな変わり目がある。私たちは創業2年目から英国に支店を作り、事業開発と技術開発を進めてきた。欧州では今、ガスボイラーが電化する流れがある。特に英国においては、25年年明けから新築住戸はガスボイラーの設置が完全に禁止され、電気ボイラーに全部置き換わっていく。そうすると電気の消費要素が急激に増えるため、エネルギーマネジメントなどの融合というものが求められる。
当社は3年以上前からダイキンヨーロッパとエネルギー・マネジメントサービスで協業し、準備を進めてきた。協業のスピード感や状況にもよるが、何年も先というよりは(期待という意味では)来年度にも収益化のチャンスがあると思っている。(SS)