カバー(5253)が3月27日、東証グロースに新規上場した。VTuberプロダクション「hololive production(ホロライブプロダクション)」を運営。VTuberによる配信コンテンツサービスを起点にライブイベント、マーチャンダイジング、ライセンスタイアップといった多様なエンタメサービスを展開している。初値は公開価格比2.3倍の1,750円。上場当日の記者会見で谷郷元昭代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
世界に広がるファンコミュニティ……ホロライブプロダクションのVTuberは日本で48名、インドネシアで9名、英語圏で18名と主に3つの言語圏で活動している。トップクリエイターとクオリティの高いキャラクターIPを開発し、配信者に提供することで毎年複数のVTuberをデビューさせている。2022年2月期で136億円の売上高を計上し、その前の期比138%増と急速に成長しているような状況。ファンのコミュニティは7,200万人を超え、国内のみならず海外にもファンコミュニティがある。チャンネル総視聴回数のうち41%が海外のアカウントからとなっている。
世界的人気のVTuber独占……VTuberの業界のパイオニアとして、YouTubeにおけるチャンネル登録数ランキングにおいてグローバルトップ10をほぼ独占しているような状況。VTuberのカルチャーが比較的浸透している北米、日本、東南アジアにおけるチャンネル登録数No.1のVTuberは全て当社保有のVTuberとなっている。こうした人気を獲得している背景として、熱量の高いファンコミュニティの拡大が大きな点としてある。各VTuberが多頻度にライブ配信を行うことでファンの熱量を高めていく。そしてVTuberがファンのチャットに返答することで双方向的なコミュニケーションが生まれていく。また、イベントの衣装や3Dモデルの実装、オフライン/オンラインでのライブイベントの実施や、グッズの企画・販売を行うことでファンのエンゲージメントをさらに高めている。ファンの方々も様々な切り抜きチャンネルやファンアートなどを通じて、ファンがファンを呼ぶ形でこのコミュニティを拡大しており、これが模倣困難な参入障壁になっている。
業績は急成長中……強力な事業モデルにより、成長性と収益性を両立している。20~22年3月期は、ホロライブIPを活用した多様なコマース展開の拡大に注力。利益率は直近のプロダクトミックスの影響で利益率が一時期凹む時期もあったが、直近では回復している。今後も安定的に新規のVTuberを輩出、また、ファンコミュニティを拡大していくことに加えて、ホロライブIPのブランドに基づいた収益性の高いマーチャンダイジングビジネスを強化していくことで、成長性と収益性を一層高めていきたい。
中長期の戦略……三段階に分けて進行している。第一段階として、これまで当社はプロダクションに所属するVTuberの影響力拡大やファンコミュニティの獲得に注力してきた。その結果、各地域でYouTubeチャンネル登録No.1のVTuberを保有するとともに、安定して人気VTuberを育成するプロセスの確立に成功している。足元第二段階としては、当社の企画力を生かしたグッズ展開やライセンス/タイアップ案件といったコマース事業を加速することに注力している。中長期的にはこうした活動を自社開発のメタバースサービスによりさらに拡張することで独自の体験価値を創り出していくとともに、大きな潜在市場をとらえることを目指している。
マネタイズを強化……第二段階のコマース展開は、メディアミックス展開全般になる。これは恐らく中長期的に市場で大きなビジネスになっていくと想定しており、短期的にはそれがコマースやライセンスのビジネスにあたる。ライセンスは足元ではフィギュアなどが中心となっており、24年3月期の収益もコマースのビジネスが牽引していくとみられる。さらに25年3月期以降に関しては、例えばゲームへのライセンスアウトやアニメーションの企画など、多様なメディアとのメディアミックス企画が実現していける可能性がある。メタバースに関しては24年ローンチ、本格的なマネタイズは恐らく25年以降になると思うが、マネタイズは主に2種類を想定。1つが今も実験的に実施しているライブでのマネタイズで、こちらはライブのチケットを販売するというよりかは、ライブ時の投げ銭やライブと連動したアバターグッズや物理的なグッズの販売などが考えられる。もう1つは、いわゆるアバターの衣装販売というようなものを想定している。
海外展開……昨年度は海外のアニメ系のイベント21個に出展し、ファン向けのイベントを開催してきた。今年も18のアニメーションのイベントに出展する予定のほか、7月にロサンゼルスで英語圏のタレントが出演する大規模なライブのイベントも実施する予定。一方、現在はライセンスやコマースのビジネスについて、海外圏はまだまだ需要に対して供給が追い付いていない状況。特に北米を中心としてわれわれのプレゼンスやファンの熱量といったものを高めていった上で、そのあたりライセンビジネスの海外向けの強化、あるいはコマースで海外の方が買っていただきやすいような商品の開発などに力を入れていきたい。(SS)