グリッド(5582・G)が7月7日、東証グロースに新規上場した。電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に集中し、インフラに関わるオペレーションの計画をAIの技術を使って自動化・最適化している。初値形成は週明けに持ち越し、公開価格(2,140円)の2.9倍となる6,400円。上場当日の記者会見で曽我部完代表取締役(写真)が語った内容のポイントは次の通り。
AI×最適化……インフラのオペレーションは制約条件を守らなければならない様々なルールがあり、今まではこれらを全て加味して人が計画を立てていたが、われわれの技術をもってインフラのオペレーションを自動的に立案し、最適化している。導入後も顧客がシステムを利用し続けられるよう運用・サポートを行い、ビジネス要件の変化などにも対応している。
他のAI企業との違い……一般的なAIの会社のように、ビッグデータを使ってモデルをつくるということはあまりやっていない。その代わり、インフラで出てくる物理式やビジネスルールを数学式で再現し、そこからデータをつくり出してアルゴリズムで最適化している。そのため、AIの会社と比べられることがほとんどない。一方、当社の顧客であるインフラの会社と付き合いがあるような従来型の大手SIerや大手総合電機メーカーとも競合することはなく、独自のポジショニングを築いている。また、エンジニアもデータサイエンティストというよりは、社会インフラ出身で応用物理や数学に強いといった、社会側にいるような人材が活躍している。
利益重視の経営……ストック型売り上げ(運用・サポート)は昨年までほぼなかった。2023年6月期になって初めて積み上がってきた。現在、30社前後の取引があり、受注金額は1社当たり4,500万円強程度。上位5社のうち2社は年間受注高が1億円以上と、顧客当たりの売り上げが徐々に増えている。しっかり利益を出して成長していくことを重要視しているので、着実に営業利益を積み上げていく。今後、売上高成長率30%を維持しつつ、営業利益率は直近で約14~5%ぐらいの推移となっているが、中期的には25%を実現したい。
成長戦略……同じ会社の中にも様々な計画業務があり、これらを1つ1つこなしていくことでアップセル・クロスセルを図っていく。また、業界ごとに同じような計画を立てている傾向があるのもインフラの特徴。このように、特定の産業の特定の計画に特化した製品をクラウドに乗せて提供するインダストリークラウドというカテゴリで、「ReNom APPS」というプロダクトとして提供している。業種・分野問わず誰でも使える従来のクラウドに対し、われわれは非常にニッチ。現在は電力や配船などを行っているが、今後もどんどん分野を広げていきながら、かつその分野の中でも様々な計画があるので、それを拡張していく。
海外展開、量子コンピュータも……海外に目を向けると、どこの国でも同じようなインフラのオペレーションの計画を立てている。特に日本のインフラは世界的に見ても非常に優れているので、国内で確立した優れたソリューションを海外に展開していくことにもチャレンジしていきたい。われわれは株主に総合商社も何社か入っているので、海外に進出しやすい環境と考えている。また、17年から量子コンピュータに関する研究開発を続け、論文の発表や特許の申請も行っている。計画最適化と量子コンピュータの計算速度は非常に相性が良い。従来のコンピュータで計算されているものが、いずれ量子コンピュータに一部置き換わっていく世界も考えられる。(SS)