TOP  NSJアップデート  IPO  IPO社長会見 ケイファーマ 慶応大発のiPS医療ベンチャー
IPO2023年10月23日

IPO社長会見 ケイファーマ 慶応大発のiPS医療ベンチャー

ケイファーマ(4896)が10月17日、グロース市場に新規上場した。慶應義塾大学発の再生医療ベンチャーで、iPS細胞を活用した脊髄損傷などの再生医療と、ALS(筋萎縮性側索硬化症)など神経難病に対するiPS創薬の世界初の実用化を目指している。福島弘明代表取締役社長CEO=写真=は現職の慶應義塾大医学部特任准教授、岡野栄之取締役CSOと中村雅也取締役CTOは教授。初値は公開価格を7.8%下回る875円。上場当日の会見で、福島社長、岡野CSO、中村CTOが語った内容のポイントは次の通り。

大谷選手のような二刀流で……(福島社長)会社を立ち上げるときiPS創薬と再生医療の二刀流でやろうと決めた。どちらかがフォローすれば危機的状況を脱せる。今は創薬がアルフレッサと提携でき、今後は海外に攻めていく。一方、再生医療の方は準備に時間がかかるが、商品化できれば(創薬と)ひっくりかえる。いろいろなバイオベンチャーを見てきたが一本足打法はリスクが高い。大谷(翔平)選手のように二刀流なら、戦略として間違っていない。

脊髄損傷の再生医療をリード……(福島社長)2007年に山中(伸弥)先生がiPS細胞を発明し、日本で臨床試験が進んでいる。(iPS再生医療の)脊髄損傷に関しては慶応がリードしている。岡野先生と中山先生がiPSの前からやられており、そこを展開して一昨年から臨床試験に入った。2人の研究成果を実用化したいとケイファーマを作った。

ALS向けにアルフレッサと提携……(福島社長)iPS技術がノーベル医学生理学賞を受賞した理由は、人の機能を再生する細胞移植と薬をつなぐというのが大きな理由。患者の血液をいただいて、健康な人と比較して化合物を見つけ出す手法で、いち早く岡野先生が神経難病(の研究を)やった。中でも一番最初に進んだのがALSで、第1・第2相臨床試験の結果が出た。アルフレッサ(2784・P)と組んで第3相試験を行う。PMDA(医薬品医療機器総合機構)と相談しており、一日も早く取り掛かりたい。おおまかにいうと2020年代後半の上市を目指したい。

(岡野CSO)ALSは難病中の難病で、第2相試験で安全性、忍容性、有効性を示す良い成績がでたので、もう少し早くなるよう努力したい。

米国に拠点を起き次の手を……(福島社長)来年以降、米国に研究拠点を設立する。岡野先生がMIT(マサチューセッツ工科大学)の客員教授をしており、(近くの)ボストンが候補。最先端の技術や能力の高い人がたくさんいるので、年明けには動き出したい。

(岡野CSO)再生医療に必要とされる次の技術、ゲノム編集、組織工学などは日本よりも進んでおり、いろいろな人と出会って次の方向を模索するのが重要。既に向こうの製薬会社、臨床家、VCと知り合いになったので、効果的な次の手を打ちたい。

ともに大幅な効果を想定……(中村CTO)脊髄損傷は程度によって違うが、今やっているのは急性期の完全損傷向け。細胞治療だけで、まったく動かなかった体がスタスタ動くのは難しいが、それを軸にしてさまざまなリハビリを増やせば、日常生活レベルまでの機能改善を想定している。慢性期の脊髄損傷はまだ先の話だが、不全脊損については完全に機能回復が見込める。慢性期の完全積層はまだハードルが高く不確定だ。

(岡野CSO)ALSは人工呼吸器をつけないと3~5年で亡くなると言われる。今のところ根治は難しいが、第2相試験では生存期間を50%以上伸ばし、病気の進行もかなり減速できた。根治を目指す研究を今後していきたい。そのためにボストンの研究所でいろいろやりたい。

創薬は提携、再生医療は自社で……(福島社長)米国でも再生医療がかなり行われている。米国ではどこかの製薬会社と提携して事業展開をしていきたい。国内の創薬はプロジェクトごとに(他の製薬会社と)組んでいければ。再生医療に関してはわれわれが製造販売権を持つ自社での展開を考えている。工場を持つまでは考えておらず、CDMO(医薬品受託開発製造)に製造委託を考えており、今数社に絞っている。

(岡野CSO)難病を治す薬を見つけると実は他の病気にきくことがあり、難病は他に療法がないと承認を得やすい。他の多くの疾患につながると思っている。

患者のために一日も早く……(岡野CSO)世界情勢が最悪な時期と理解しており、何でこんなときに上場するのかと言われることもあるが、世の中でいろいろなことが起きても患者には待ってもらえない。一日も早く開発したい。(創薬は)第3相臨床試験を始める準備をしている。脊髄損傷に関しても(臨床研究が)11月で一区切りつくので、これから一気に資金を投入しようという時期。今年の上場はやめて来年にしようという余裕はない。(HS)

関連記事