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IPO2024年10月7日

IPO社長会見 シマダヤ 温暖化はチルド麺の商機

シマダヤ(250A)が10月1日、スタンダードに新規上場した。業務用冷凍麺、家庭用チルド麺大手で、メルコHD(6676・S)からのスピンオフ上場。初値は公開価格を6.3%下回る1,760円。上場当日の記者会見で、岡田賢二代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

業務用冷凍麺のシェアトップ……当社は創業93年、麺一筋の専業メーカー。確かな品質、豊富な品ぞろえで年間約8億食を販売している。売り上げ構成は家庭用が62%、業務用が38%。業務用冷凍麺は市場規模が816億円あり、当社のシェアは20%で1位。家庭用チルド麺は市場規模約2,300億円で、当社のシェア約10%で2位となっている。

新商品を続々開発……創業以来一貫して社会ニーズに応える形で付加価値の高い新商品を開発してきた。1980年、冷凍技術が発展する中、業務用冷凍麺に参入。88年、共働き世帯の増加に伴い、簡単に調理できる流水麺を発売して、ロングセラー商品となった。直近ではもともと販売していた商品をリニューアルして、経済志向(の顧客)に対して「太鼓判」、健康志向に対して「健美麺」として、顧客から支持を得て、現在も堅調に推移している。

消費者の声を反映してヒット商品……流水麺の開発プロセスについて紹介する。当時、冬は黒字だが夏は赤字だった。その理由を探ろうと87年に大規模消費者実態調査を行った。その結果「暑いから冷たい麺を食べたい」という声がある一方、「ゆでるのが面倒」「暑い夏にお湯を沸かしたくない」という意見が多数だった。麺の食べ方についてはわずか8%だったが、袋を開けてそのままツユを付けて食べる、水でほぐして食べるという意見があった。麺メーカーとしては、衛生面や触感としては考えられないことだった。そこに潜在的ニーズがあるとして、ゆでずにさっと水でほぐすだけの流水麺の開発に至った。地道にテレビCMを流したり、消費期限を延長したり、品ぞろえを増やすなどして、現在の柱となる商品に育成した。昨年までは、2年かけて主原料の国産化を図った。

創業93年のノウハウを生かす……当社の強みは麺専業で93年培った独自のバリューチェーンが強み。高い商品開発力に加え、低温商品の生産供給力、高度な衛生管理技術がある。また、小売店との独自の直販ネットワークを持っており、売り場レイアウトを含めた提案型営業を行い、かゆい所に手の届く、きめ細やかな営業スタイルとなっている。

工場増設で品不足解消へ……家庭用チルド麺市場はやや縮小傾向だが6割以上が地場の中小製麺メーカーでシェア奪取は可能と考えている。ただ、価格競争に巻き込まれないよう、しっかりマージンを確保していきたい。また、地球温暖化による気温上昇や残暑の長期化を商機と捉え、年間商品として拡大することで、夏に偏っていた販売の平準化を図る。業務用冷凍麺市場はインバウンド需要も含め、拡大傾向。収益性も高い。現在、需要に供給が追いついておらず、生産キャパシティの増強で成長の余地がある。2026年稼働に向け、前橋工場の増設を決定している。

コスト増には値上げで対応……今期は減益を計画している。人件費、特に11工場の労務費、物流費などが高騰している。原材料はトータルで見るとそこまでではないが、下期から包材やダンボールなども上がる。(コストが)上がったものについては今後(商品価格を)上げて、丁寧に説明しながらきちっと利益を出るようにしたい。また、その出た利益で新しい商品や価値創造につなげたい。

独立で迅速な経営へ……スピンオフ上場は国内で2例目。目的はコングロマリットディスカウントの解消。独立効果として3つある。1つ目は経営責任の所在の明確化。2つ目は資金調達と投資などの自由度の向上。3つ目はブランドの明確化により投資家の選択が広がること。迅速な事業戦略の遂行と持続的成長の加速につながると考えている。18年にメルコHDの子会社になったときは、生産工場におけるIT化を見込んだが、なかなか合うものが提案できなかった。本当に素晴らしいものができれば別だが、現状ではシナジーが生まれないだろうと、今回の形(スピンオフ)に至った。(HS)

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