半導体洗浄装置の製造・販売と保守サービスなどを行うジェイ・イー・ティ(6228)が9月25日、スタンダードに上場した。初値は公開価格を4.5%下回る4,420円だった。上場後の会見で房野正幸代表取締役社長=写真=は今後の成長戦略などについて語った。
アジアを中心に展開……前身は2008年9月のリーマン・ショック後の半導体不況時に経営破綻したエス・イー・エスで、同社の卓越した半導体洗浄装置に関する技術を継承するため、販売代理店だった韓国企業ZEUSの全額出資により09年4月に、エス・イー・エスの岡山工場などを事業譲渡により引継ぎ、誕生した。アジア展開を意識的に加速し、現在は韓国、台湾、中国を中心に拠点網を展開している。
独自のバッチ式に強み……半導体製造プロセスの前工程において、洗浄は極めて重要な工程で、前工程の30~40%(工程ベース)に洗浄装置が使用される。洗浄には薬液を使用するウエット洗浄と酸素ガスなどを用いるドライ洗浄があり、よく使われているのはウエット洗浄。ウエット洗浄にはバッチ式と枚葉式がある。バッチ式は25~50枚のウエハを同時にするため生産性が高い。当社製品は洗浄槽の構成や設置数の変更が可能なタイプで、他社の標準化された製品と比較してカスタマイズ性に優れる。ウエハを1枚ずつチャンバー(処理槽)内で処理する枚葉式洗浄装置は、高温・高粘度処理に優位性を持つ。赤外線ランプでウエハ上の薬液を高温にするといった特殊な機能を搭載し、処理性能・能力の向上、使用薬液の削減などを図っている。
業界内で独自の立ち位置……半導体洗浄装置は日本企業が70%以上のシェアを持ち、当社は大手2社に続き、業界3位。バッチ式が主力で連結売上高の9割超を占める。22年度のバッチ式における世界シェアは推定で11.4%。カスタマイズ性とバッチ式の比重の高さという点で、業界内で独自の立ち位置を築いている。09年から13年間の年平均成長率は21.7%で、シリコンサイクルの影響は受けるものの、今後も右肩上がりの成長を見込んでいる。23年6月末の受注残は336億円で、シリコンサイクルは25年に次のヤマが来ると考えている。
今後の成長戦略……シリコンサイクルの山谷はあるものの、安定・継続した成長の実現と利益率の改善により、近い将来に売上高300~350億円、営業利益率20%を目指す。そのために、付加価値の高い差別化された製品開発、需要の増減に対応できる弾力的な生産体制の構築を図る。今回の上場で調達した資金は新工場の建設と研究開発拠点の拡充に充てる。また、現在の主力市場である韓国と中国に加え、日本と米国の市場開拓にも力を入れ、それぞれ4分の1程度にしたい。(M)