ジンジブ(142A)が3月22日、東証グロースに新規上場した。同社は高卒人材の就職支援事業者。上場当日はカイ気配切り上げの展開で初値持ち越しとなり、週明け25日に公開価格の2.27倍となる3,980円で初値を付けた。上場当日の記者会見で佐々木満秀代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
高卒就活の現状……高卒就活ルールは制約が多く、主に①企業の直接連絡は禁止②応募は一人一社制③厳格なスケジュール④情報源はハローワークを経由した文字情報のみの求人票――などがある。②については昨今一人二社制となった都道府県がようやく増えてきたところだが、それもごく一部。また、③は夏休み期間しか職場を研究する時間がない。研究といっても会社説明会などはないので、基本的には学生が職場見学に行くが、ほとんどの学生が一社か多くて二社しか行かない。選択の余地や情報が非常に限られている。高卒採用市場は約1,600億円のポテンシャルがあるとみている。
ミスマッチの多さが課題……2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられたが、現行のルールは未成年を前提とした三者協定(文部科学省・厚生労働省、主要経済団体、学校組織)が今なお厳格適用されている。これによっておこる課題が早期離職の問題。高卒3年内離職率はコロナ禍の影響を除けば40%台を維持しており、10年内で見ると6割に上る。また、大卒も3年内離職率は30%を超えているが、第二新卒市場があるためすぐに再就職が可能。一方、高卒は離職後の再就職のハードルが高く、やめた人の4割近くがニートやフリーターになってしまう。職業選択の自由に見合ったような形に、ルールの改訂などの提言も行っていきたい。
中小企業と学生をマッチング……全社売上高のおよそ6割が2大サービス(「ジョブドラフトNavi」、「ジョブドラフトFes」)で構成されている。Naviは大学生でいうリクナビやマイナビに近い存在で、写真や動画、社員や社長の想いなど人間関係なども伝わるような情報サイトとなっている。Fesはいわば合同企業説明会であり、昨年は全国31会場で開催した。社名の「ジンジブ」には中小企業の人事部たろうという想いを込めている。特に中小企業にとって大卒採用は非常に困難であり、昨今は高卒採用のニーズが急激に高まっている(23年3月卒業者の高卒求人倍率3.49倍/大卒求人倍率1.58倍)。
9年間拡大してきた学校網……高卒就活市場を本格的にやっているのはわれわれぐらいしかいない。高校生の就活は教員がキーマンとなっているので、学校とのつながりが非常に重要になってくる。Fesも学校とのつながりがなかったらできないサービス。当社は求人票管理をデジタル化し、教員の負担を軽減する「ジョブドラフトTeacher」を無料で提供したり、学生向けの授業としてキャリア教育「ジョブドラフトCareer」を提供している。直近でTeacherは約160校、Careerは約400校に導入済み。来期には両サービス800校、中期的(3~5年)には3,000校への提供を目指す。なお、全国5,000強ある学校のうち、昨年ベースで1,849校とのつながりを持っている。これを早期に全国へ広げ、学校網のさらなる拡大を図る。
全国をカバー……成長戦略は、①地方深耕②付加価値向上③業容拡大――。上場で得た資金は、まず人材の採用と教育、そして高卒採用の課題を世の中に知ってもらうための広告掲載などを考えている。①では、今後3年間で営業エリアを拡大し、全国のエリアをカバーしたい。現在、支店は9拠点だが、まずはこれを早期に20拠点まで開設する。また、われわれの強みの1つでもある提携金融機関数を増やす。金融機関は主に地銀や信金で、人材のニーズが一番高い。提携金融機関数は足元で70行を超えてきた。金融機関が企業を紹介してくれるという形がわれわれの主な商談のリードとなっているので、上場を機に200行ぐらいまで増やしたい。
単価向上、新市場開拓……前3月期でNavi掲載企業数は2354社、このうち有料プランは1,500社程度。3つの価格プランのうち、学校情報の提供やカスタマーサポートまで行うサポートプランが当社の売り上げの大半を占めており、リピート率はおよそ6割。また、Fesは1ブースあたり20万~40万円程度の料金体系となっている。基本料金に関しては学生や学校サイドはほとんど無料で、あくまでも企業側に料金貰うビジネスモデル。②では、採用領域以外の教育や人事評価、離職問題の解消などで1件当たりの受注単価の向上を図る。
“高卒”を起点にライフサポートへ……③は高校生の第二新卒市場(18~25歳の再就職)にこれからさらに力を入れていく。高卒人材は年間で10万人強転職すると言われるが、こうした市場を民間で支援している会社はほとんどいない。若い方々に必要なのは「夢と希望」であり、この第一歩が就活支援と考えている。若者が大きな夢や自分なりの目標を持つことができれば、社会課題である少子化の改善にもつながる。今後は若者が様々なキャリアを描いていく中で必要となるスクールの展開や、将来的には結婚や出産などライフサポート事業にも業容を拡大していく。(SS)