ダイナミックマッププラットフォーム(336A)が3月27日、グロースに上場し、公開価格を27.5%上回る1,530円で初値を付けた。同社はダイナミックマップという高精度な位置情報をグローバルに構築するディープテック型のスタートアップ。上場当日の記者会見で吉村修一代表取締役社長CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
高精度の3次元地図データを生成して提供……様々な情報とわれわれのプラットフォームを結びつけることで各業界でイノベーションを起こしている。プロダクトは3つ。1つ目は自動運転、ADAS(先進運転支援システム)向けの高精度3次元地図、いわゆるHDマップ。HDマップは自動運転のレベル2プラス以上の自己位置推定に用いられる制御データのこと。当社は既に日本、北米、欧州、韓国、中東とグローバルに主要道路を高精度に三次元化し、それをグローバルに様々な自動車会社向けに提供している。2つ目はViewer(ビューアー)。これはわれわれが取得・生成している高精度の3次元地図データをいつでもどこからでも閲覧可能になるサービス。写真だけのグーグルマップと異なり、われわれは高精度で3次元データを取得しているので、場所や距離を正確に把握可能。よって主に産業用途で用いられている。インフラの点検や事故現場の調査などで使用され、現場に行かずともデジタル空間上で作業を効率化できる。3つ目がGuidance(ガイダンス)。これは高精度な3次元データをタブレットに搭載し、ガイダンスするもの。3次元でcm級のガイダンスが可能。これによりDX化が遅れていたような業界においてもさまざまな産業用途で使用されている。例えば、除雪作業の支援では降雪によって見えなくなったガードレールなどの位置情報を正しく取得できるので、安全に効率的な除雪作業支援が可能。倉庫や空港、港湾といった制限エリアでもサービスを立ち上げている。
ビジネスモデル……プロジェクト型ビジネス、ライセンス型ビジネスに大別できる。プロジェクト型は生成するデータの権利や知的財産は基本的に弊社に帰属する形でデータを生成している。これにより弊社の事業基盤を構築する役割を持つ。ここで生成したデータや技術をライセンス型ビジネスに転用することでデータビジネスならではのマージナルコスト(限界費用=生産量を増加させたときに追加でかかる費用)がほぼ掛からない、限界利益率が極めて高いといった収益性を実現できる。これまではプロジェクト型ビジネスを主に取り組み、事業基盤を構築してきた。2025年は創業以来続けてきた先進国の主要道路のデータ生成が完了する。今後自動運転市場、ADAS市場の広がりと、それ以外のノンオートモーティブの3Dデータビジネスにおける旺盛な需要をしっかり取り込むことで、高利益率のライセンス型ビジネスの拡大に注力していく。これにより中期での高い売上高成長と高い利益率の実現が可能になると考えている。
強み……なんといっても、グローバルのマーケットにアクセスできることが強み。日本のスタートアップでは珍しく、われわれはグローバルマーケットでペイをしている。既に26カ国で事業を展開し、データ量は世界トップクラス。ここが成長がドライブするポイントになっていく。2点目はグローバルなマーケットを攻略できる経営陣。従業員250人程度のうち7割が外国人で構成され、エンジニア比率も7割。グローバルかつテック型の会社と捉えていただきたい。経営陣も多様性に富んでおり、国籍、肌の色、性別などなど、多様性に富んだチームで事業を進めている。3点目はエンジニアが持つ世界トップクラスの技術。データを生成するには最新のセンサ技術、測量技術が重要になる。そこで取得したデータを3次元化する高いソフトウエアの技術力、並びにデータ量が豊富なのでデータベースの構築力にも強みがある。プロダクト自体が制御に使われる観点から重要な安全部品となり、新規にプレイヤーがこの業界に入ってこようとしても、われわれが既に培っているデータの仕様や技術の仕様は模倣が困難。4点目は、豊富な顧客基盤。もともと国内自動車メーカー10社から出資いただき設立され、その後、19年に北米のGM系会社を買収し、そこからさらに広がり、グローバルな様々な自動車会社を顧客に抱えている。搭載実績は35車種、35モデルを数え、世界で一番使われているデータベースというものをわれわれは保有している。また、自動車事業だけでなく、3Dデータビジネスにおいても、もともと日本政府が主導して設立された会社であるという点からも様々な省庁との関係は強く、取引実績も豊富。スタートアップとしては珍しく、様々な大企業との取引実績も多い。
ビジネス展開……自動運転レベル2プラス以上のマーケットは年率37%で30年まで伸びると推計されている。また、レベル2プラス以上の車については30年時点で発売される新車の3割になると推計されている。われわれのオートモーティブビジネスも市場の伸びと連動して成長していくことが期待されている。ノンオートモーティブも非常に大きな市場。現時点で既にわれわれが展開している地域と事業領域だけでも1.6兆円のマーケットがあり、これをしっかりと刈り取っていく。一番の強みである世界最大のデータアセットを使ってオートモーティブとノンオートモーティブの両方をしっかり伸ばし、グローバルで成長していきたい。
黒字化の時期について……単年度黒字の時期について明言は開示上させていただいていない。一方で利益に対するこだわりは強く持ち、グローバルにメンバーを動かし、経営している。既に持つパイプラインを形にし、かつ、いまある固定費と利益率で割り返すと黒字化は計算可能なのできちんと早く実現していきたい。中長期業績目標については会社として今後こうしていきたいという思いはあるが、開示という観点では具体的な数字はまだ掲げていないのでコメントは差し控えたい。ただ目指したいところは、グローバルでのデジタル社会のインフラ。投資いただくみなさまにできるだけ満足いただけるよう会社の規模感になっていきたい。機関投資家から一番評価いただいたのはデータ量が豊富である点、導入が進んでいること、自動車ビジネスのみならず自動車以外もパイプラインが明確で今後の成長の確からしさが感じられるという点。(Q)