デジタルグリッド(350A)が4月22日、グロースに上場した。初値は公開価格を17.4%上回る5,310円。同社は民間では日本初の電力取引所運営会社。上場当日の記者会見で豊田祐介代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
2020年に商用サービス開始……創業は2017年。大学時代の研究をもとに、電気に色をつけて自由に売買するプラットフォームを作ろうということで立ち上がった会社。国の実証事業を経て、20年2月にデジタルグリッドプラットフォーム「DCP」を商用ローンチした。手数料ビジネスに徹しており、売り手と買い手からいただいている。
AIで自動化し市場競争力向上……これまで法人は電力会社さんから決められたメニューから一番割安な電源を買ってきた。われわれはもう一歩深掘り。マグロに例えると、スーパーで切り売りされたマグロを買うのではなく、マグロを欲しい分だけ直接買える市場を提供している。電力会社さんが行っている大変な業務の一部をAIやソフトウエアを使って、人手でなくてもできるようにしているところがミソ。市場からマグロを買って何がうれしいんですかというと、大きく2つある。1つは、産地のものを直接買えるのでコストカットできる。コストカットの源泉は、人が行っていたことをソフトウエアにやらせること。2つ目は、自分の好きな電源をリスク許容度に応じて調達ができること。
新しいビジネスモデル……22年ぐらいから電力料金上昇で困っている方が増え、参加者が増加。売上高、取り扱い電力量、営業利益が伸びている。売上高営業利益率は44%。仕入れて販売する商社的なビジネスモデルならばこうはならない。われわれが提供しているのはプラットフォーム、プロダクト、ソフトウエアであり、高い利益率のもとに新しいビジネスモデルを展開している。
3つのKPIを開示……KPIとして3つ開示している。1つが「電力取扱量」。取扱量に掛け算をすることの手数料なので、売上高に直結する数字。ただこれだけでは実力を測りかねるところがある。取扱電力量はお客さまの数が増えなくても、気温によって変わる傾向があるため。このため2つ目として「契約容量」を開示している。これはシンプルにお客さまがどれぐらいの容量契約しているか、お客さまの数を端的に表している。3つ目が拠点数。拠点数で契約量を割ることで大口顧客が増えているのか小口顧客が増えているのか、傾向がつかめる。売上高や営業利益といった数字の解像度を上げていただくべくKPIを開示している。
強み……われわれのコアは、取引をマッチングすることではなく、ラストワンマイルまで電力を送り届けるところまで行うことにある。そのために必要なことは「事前予約」。電気は光の速度で届いてしまうので、事前に電線を予約する仕組みになっている。その際に活躍するのがAI。われわれは拠点ごとにAIを構え、プロファイルからどう電気を使うか予測をして、事前に電線を予約している。
成長戦略①既存ビジネス……既存ビジネスはまだまだ伸長、進化する。現在のターゲットはダイナミック・プライシング市場。22年ぐらいから電気料金の常識は変わり、電気料金が市場に連動してしまう方々、今までの旧来型の電気料金メニューでは電気を買えない方々が出てきている。統計などからそういった方々は130億キロワットと推計しており、われわれのシェアはまだ10%程度。まだまだ拡大余地がある。
成長戦略②新規事業(再エネ)……加えて新規事業として再エネ領域と蓄電池領域に力を入れていきたい。これはわれわれのミッション「エネルギーの民主化を実現する」、ビジョン「エネルギー制約のない世界を次世代につなぐ」に直接関係する。再エネは火力、風力など再エネ産業が出来上がってきている中、40年に向けては民間で成立させるフェーズ。非FITの世界では政府保証や電力会社の買い取り保証に甘んじることなく、自分たちで売り先や買い主を見つけて電気を送り届けることが推奨される。これを急にやれと言われてもそれをできる事業者ばかりでなく、われわれはそういった方々を支援したい。
成長戦略②新規事業(蓄電池)……足元では日中の電気は余り、捨てられている。太陽光、風力など再エネもそれだけでは完結しない。調整したり、思った以上に発電しないときにバックアップとして入る蓄電池は、今後のエネルギーインフラを考える上で必要になってくる。われわれは昨年12月から蓄電池を整備するビジネスを始めており、今後も拡大していきたい。上場にあたり得た資金は蓄電池投資に充てる。プラットフォーム事業は公明正大であること、信用力があることが大切。財務関係も含めて公の場にさらされることで、これからも緊張感を持ち続けるということも上場目的の一つ。(Q)