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IPO2024年3月22日

IPO社長会見 トライアルHD リテールテックで小売りの社会を変革

トライアルホールディングス(141A)が3月21日、グロースに新規上場した。EDLP(エブリデイ・ロープライス)を強みとするディスカウントストアを全国に展開するとともに、流通業向けのITシステムを展開するリテールAI事業を手掛けている。初値は公開価格を30.3%上回る2,215円。上場当日の記者会見で、亀田晃一代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

一歩踏み込んだ小売りのDX……2000年から急成長をはじめ23期連続の増収となっている。00年まではスーパーセンター業態の開発をずっと続けていて、00年に金融恐慌のタイミングで、九州では大手小売業3社が破綻したのでその空き店舗に居抜きで出店していく形で投資効率が非常に高い業態として展開した。その間、中国でシステム子会社をつくり、e3-SMARTというデータ分析基盤を作った。居抜き出店は今でも続いているが、10年ぐらいから標準店舗を新設するドミナント展開を始めた。また、MD-Linkというプラットフォームを作って、メーカー、ベンダーとデータを共有して共同マーケティングを続けている。17年に「Retail AI」という会社をつくり、そこから一歩踏み込んでDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めている。店舗の顧客体験を上げることと店舗のデータ生成をよりリッチにするため、AIカメラとセルフレジ機能付きショッピングカート「Skip Cart」(スキップカート)を始めた。

全国展開で出店余地は十分……九州中心だが北海道まで全国311店舗を展開している。居抜き出店とM&Aを活用して成長のスピードを早めてきた。店舗形態、立地も様々。新築展開は売り場面積約4000平方メートルのスーパーセンターで、非常に高い収益を上げている。居抜き出店は8,000平方メートル規模と大型のメガセンターや、スーパーの跡地のsmart、さらに小型店の出店も始めている。全国展開は終わっており、ここをドミナント展開で埋められるので、出店余地についてはまだまだあり、成長していけると思っている。

足元は生鮮と惣菜が牽引……商品は生活必需品を過不足なく扱っている。生鮮食品が中心だが、非食品も3割あり、生活雑貨、家電、洋服まで用意している。非常に売れるもの、グループで作ったほうがいいものはプライベートブランド(PB)で少しずつ商品強化している段階。足元は生鮮と惣菜が牽引している。生産者、養殖業者、メーカーと一緒になってより効率的なサプライチェーンを作ることで生鮮が良くなっている。また、40人ぐらいの和洋中の食の専門家がおり、非常にレベルの高い惣菜がローコストでできる。バックヤードの機械化を含めたオートメーション化も進み始めている。

スキップカートを全店に……リテールAI事業は安価で高速にデータを処理するe3-SMARTを自社開発し、その上に乗っているMD-Linkでサプライチェーンの効率化。さらにRetail Mapで地図データ、行動データを自社のデータを融合して商品分析を進める。スキップカートやAIカメラなどIOTデバイスを活用して、客の顧客体験を上げようとしている。スキップカードは買い物かごにタブレット、バーコードスキャナーを付けている。客は買い物をしながら決済を終わるので、一番のストレスと言われるレジ待ちをしなくてよい。さらにこれまでの購買データに基づいて適切なクーポンを発行する。来店頻度は6.3%上がり、利用率は平均25.7%。ちゃんと使っている店は利用率4割を超えているので、そのくらいの水準まで行くと思っている。ほぼ全店に導入する予定で、現在208店舗が完了している。店にとってもレジ待ちがなく客の回転が良くなるので売り上げが上がる。ほかの小売りにも積極的に案内している。

上場を機に出店加速……日本の小売業は40兆円のムダ・ムラ・ムリがあると考えており、テクノロジーと人の経験値で世界のリアルコマースを変えるのがビジョン。既存店はまだまだ成長が続いており、上場を機に出店を加速しようと思う。ドミナント展開は収益性が高い。さらにリテールテックが普及することで、社会全体がより良くなると思う。そういう世界をつくっていきたい。(HS)

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