トランザクション・メディア・ネットワークス(5258)が4月4日、東証グロースに新規上場した。電子マネーをはじめ、クレジット、QR・バーコード決済、ハウスプリペイドなど様々なキャッシュレス決済ソリューションを提供。初値は公開価格を49%上回る1,388円。上場当日の記者会見で大高敦代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
クラウド型電子決済を国内で初めて商用化……従来はブランドごとに複数の端末が店頭に置かれていたが、これをクラウド化することによって1台の端末にまとめ、弊社のセンターの中にいろいろなサービスを具備することによって、流通事業者さまに対して電子決済のワンストップソリューションを提供する事業を展開。日本で初めて電子マネーのクラウド化の決済を商用運用に持って行った会社と言われている。その後、電子マネーのゲートウェイが完了した後にクレジットカード、プリペイドカード、QRコードという形で対応ブランド数を増やしていき、最近では44のサービスをワンストップで提供できる会社に育ってきている。
高い参入障壁……フィンテック企業の中でもエンジニアの率が高い、技術オリエンテッドな会社であると言える。クラウド型の電子決済ゲートウェイという事業自体は、国内でも数社しか提供できず、そういう意味では非常に希少価値が高いサービスになっている。端末が1台にまとまるということに加え、従来のリッチクライアントという方法に比べて端末の価格も安く、運用も非常にフレキシブルに行える利点がある。中でも、比較的大規模な加盟店さま、業界上位の流通事業者さまが顧客に多い。弊社の営業が直接アプローチをしている。一方、SMB(小規模)の顧客に対してはパートナーシップによって事業展開を行っている。例えば株主でもあるNTTデータやGMOフィナンシャルゲートなど。大規模から小規模のまで広くカバーしている。
ストック収入+GMV課金……弊社の基本的なお金のいただき方はサブスクリプション型。顧客に提供するサービス数×端末の台数で固定料金が決まってくる。使われても使われなくても固定の料金をいただくということで、非常にダウンサイドがない安全なビジネスではある。一方、アップサイドをとりにくいというビジネスモデルでもある。そこで弊社がこの2、3年試行しているのが、使われた金額に対してのパーセンテージを課金していくGMV(流通額)課金。特にQRコードの決済などで進めている。
情報ビジネスへ展開……日本の電子決済化は急速に進んでいるものの、まだ60数%が現金でやり取りされており、購買の動向を把握するには電子決済の動きだけを把握するのではだめではないかと言われている。現金の動きを捕捉し、消費の全体像や人の行動の全体像を捉えることで、新たなサービスや新たな商品開発につなげていただくというところが、私たちの中長期的な成長戦略になっている。これを弊社では情報プロセッシング事業と呼んでいるが、情報プロセッシング事業と過去15年にわたってきた電子決済の総合的なサービスをしっかりとマッチングし、消費の行動を全面的に把握することで、流通の皆さま、そして消費者の皆さまに便利なサービス・商品を開発・提供していきたいと考えている。
1to1マーケティング領域を志向……通常、データビジネスは、購買情報を入手し、これを抽象化することで第三者に展開するというモデルが行われている。ただ、情報を入手するためのコストや、情報を二次利用する際の消費者保護の観点という課題もある。これに対して弊社が行うことは、顧客から集めた情報を顧客のためにまた戻すという形をとる。まず地域ごとにどの品目がどの世代の人たちによって購買されているかというところをグラフなどで可視化、時には分析し、情報の出元の方々に違う形でお戻しとするということをまず第1のプロセスと考えている。戻ってきたその情報を流通事業者さまが使う時には1to1マーケティングという形につながっていくと思う。
上場で信用力強化……最も上場で重視したのは信用力の強化。これは弊社の顧客に流通事業者の方々が多いということに起因しており、かつ、大規模な店舗に私たちのシステムを導入いただくという背景からすると、そこに大手SIerや有名IT企業が入ってくることになり、お金の処理をより信頼できる会社に任せたいという本質的な要望がある。まずその信用を補完するという意味で、上場が必要だと考えた。
協業でさらなる事業拡大……また、中長期的な成長戦略の中での購買全体を把握するというアクティビティーの中においては、企業との連携やM&Aによって新たなシステムをつくり上げ、より幅広い需要に対してニーズを満たしていかなければならない。その資金の確保といったところもある。連携やM&Aの観点は3つ。1つは開発リソースの調達という意味でITエンジニアを抱える会社、もう1つは情報プロセッシング領域における幅広いサービスという点から、クーポン配信会社や、既に流通業向け基幹システムで顧客の1to1マーケティングを担うソリューションをお持ちの会社、最後に私たちがやっていないBtoCのサービスを行っているフィンテック会社などが提携の候補に挙がってくる。(SS)