ハンモック(173A・G)が4月11日、グロースに新規上場した。初値は公開価格を4.8%上回る2,160円。法人向けのソフトウェアメーカー。上場当日の記者会見で若山大典代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
成長ステージの異なる3領域……「組織を強くするIT環境を全ての人へ」をミッションに掲げており、業務領域が異なる3つの事業を展開している。1つ目がネットワークソリューション事業で当社の主力。IT運用管理、セキュリティ対策、情報漏洩対策を統合管理するソフト「アセットビュー」を提供している。最も伸びているのがセールスDX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューション事業で営業支援を行う製品「ホットプロファイル」。最後にAIデータエントリーソリューション事業は当社の独自AIOCR技術を用いて、データエントリーの業務効率化を図る。ネットワークソリューションは年平均8%の安定成長、セールスDXソリューションは26%の高成長、AIデータエントリーソリューションは将来成長させたい事業として4%成長となっている。成長ステージが異なる事業を持っているのが強み。営業利益も着実に伸ばしている。
中堅企業に注力……ハンモックサイクルというものを構築している。営業活動で市場のニーズをしっかり捉え、迅速な意思決定でプロトタイプ開発とテストマーケティングを早急に実施。市場にニーズあると捉えたら、すぐに製品化でき、新規の顧客開拓を行える。製品の開発スピード、開発力が強み。顧客は大企業から中小企業まで幅広く、業種によらず製造業、サービス業、官公庁など様々。1月の段階でネットワークソリューション1,901社、セールスDX1,185社、AIデータエントリーソリューションは211社。大企業は9.9%の導入率だが、中堅企業は2.2%と潜在市場はまだまだある。大企業も伸ばすが特に中堅企業に注力して、製品開発や営業活動をしていく。
14機能まで増加……「アセットビュー」はIT運用管理、セキュリティ対策、情報漏洩対策をトータルで行う。全て当社で開発して、14の機能まで増えている。歴史が古く2000年にリリースし、その後起きた情報漏洩事件や法改正などの対策をいち早くリリースした。ずっとオンプレミスだったが、他社に先駆けてクラウド化に取り組み、24年3月期はクラウド比率は32%の見込み。4年前は10%なのでリカーリングが増えている。解約率は0.2%程度と非常に低い。
一気通貫のサービスが強み……「ホットプロファイル」は100%クラウドのサービス。営業にとって重要な新規開拓、名刺による顧客管理、セールスフォースオートメーション(SFA)、マーケティングオートメーションの4つのプロセスがベース。他社は名刺管理だけ、SFAだけだが、当社は一気通貫のサービスなのが強み。中堅企業はDX化したいが、資金がなくてなかなかできない。別々の(企業に発注すれば)連携は大変で、コストもかかる。われわれは低コストで全てでき、さらに独自AIを用いて蓄積した480万社以上の企業データベースを利活用できるため、中堅企業の受け皿となり、売り上げを伸ばしている。解約率も0.8%程度と低い。販売もNTTコミュニケーションズ、大塚商会など大手にOEM(相手先ブランドによる製造)で提供し、大手の顧客に提案を加速している。
BPO事業者向けにAIOCR……AIデータエントリーソリューションはオンプレミスの「AnyFormOCR」、クラウドの「Woze」を提供する。強みはAIOCR技術で、複数のAIOCRが文字を認識して、不一致だったものだけをチェックすれば良く、コストを削減できる。クラウドでは在宅ワーカーが不一致データのみをチェックして入力を代行。オペレーター不足BPO事業者に伸びていくと思う。
クロスセル強化を図る……成長戦略としてはハンモックサイクルをしっかり回して、新商品をどんどん出し、新しい顧客を開拓する。また、リカーリングモデルにシフトしていき、安定した収益を上げる。現状、営業、製品開発、カスタマーサクセスは事業部ごとに置いている。顧客同士のクロスセルも積極的に行ってこなかった。今後はクロスセルを強化していきたい。今年の配当性向は21%の見込み。今後もこの水準を維持して還元したい。(HS)