ビースタイルHD(302A)が2024年12月27日、グロースに新規上場した。「しゅふ」にフォーカスし、派遣・紹介事業、求人メディア事業などを展開する。初値は公開価格を60.6%上回る3,325円。上場当日の記者会見で三原邦彦代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
女性の結婚後のキャリアをつくりたい……社名はベストベーシックスタイルの略。「しゅふ」という言葉は世の中では既婚女性と定義されるが、われわれは広く捉えて、未婚、既婚の区分はしていない。男性でも育児家事を結構する人はいるのであえて、ひらがなで「しゅふ」としている。育児、看護、介護との両立や趣味の時間確保、病気療養のようにライフスタイルに合わせながら仕事をしなければならないという人が増えており、多様化した仕事を提供する。02年に創業したが、当時は女性の結婚後のキャリアがなく、まだまだ寿退社のようなことがあった。代替労働力として女性を活用する時代が来ると考えたとともに、女性の結婚後のキャリアをつくりたいという社会的な使命感で事業をスタートした。
メディア事業が急成長……グループのうちビースタイルスマートキャリアは派遣・紹介事業、ビースタイルメディアは「しゅふJOB」という求人サイトを運営。ビースタイルバリューテクノロジーズは76人のプロパーエンジニアを抱えており、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を行っている。そのほか、特例子会社で障がい者雇用を促進するビースタイルチャレンジがある。売上高は108億円のうち、派遣・紹介事業が72億円、メディア事業が26億円だが、近年、メディア事業が非常に高い成長率を見せている。派遣・紹介事業の売上総利益率は19%ぐらいだが、メディア事業の売上総利益率は98%と高いのが特徴。
質の高い人材提供で顧客企業の課題解決……特徴・強みは大きく3つ。まずしゅふに特化していること。派遣・紹介事業の長期派遣スタッフの女性比率は98%、メディア事業の登録会員の女性比率は88%。社会人経験、ハイキャリアの方が多いのが強み。ライフスタイルに合わせた派遣社員は時短となり売上高が下がるため、大手の総合人材会社はしゅふに特化した戦略はとっておらず、差別化できる。2つ目が求職者の集客力。「しゅふJOB」という名前にすることで認知度が上がり、テレビなどにも取り上げられ、会員数は右肩上がり。3つ目はクオリティの高い人材を提供して、求人企業の課題を解決する。医療福祉、家事代行など地域に根差した女性の採用ニーズが拡大している。しゅふ層は離職率が低いことも企業から支持を得られる理由。女性の非正規労働者率は53%と高い。女性は各年代とも労働参加余力があり、まだまだ女性の労働力率は高くなっていく。40年には第2次ベビーブーマー世代が60歳代になり、女性の方が男性より多いので、労働量として貢献できる。
外国人など領域拡大へ……成長戦略として、「しゅふ」のさらなる活躍支援を行っていく。「しゅふJOB」を中心に既存人材サービスを拡大する。現在、首都圏の1都3県と関西圏中心にCMを放送しているが全国に広げ、営業、集客支援を整備し、全国区のメディアとして成長させる。また、「しゅふJOB」で採用することが得意な業種・職種での派遣紹介を拡大していく。女性以外にも新たな代替労働力は、シニア、外国人、ロボットがあり、そちらでも人材供給をしたい。さらに、ビースタイルビジネス開発研究室を設立。副業、外国人、社会福祉、生成AIのリスキリングで新規事業化を目的としたテストを行っている。また、スマートキャリアというブランド中心に育児、家事とのバランスをとりながら、働きやすさだけでなく、働きがいのあるスマート企業の派遣・紹介求人を強化する。新型コロナで大きな打撃を受け、投資をメディア事業だけに集約していたが、25年度から3事業とも投資を行っていく予定。
年収の壁問題も追い風……「年収の壁」問題がどのような影響があるかの質問が多い。103万円という指標が上がると、働く時間数が増え、時給が高まる。労働参加余力がある人は単純に労働時間が増え、われわれの売り上げ、利益にダイレクトにヒットする。また、転職者が増え、人材の流動性が上がってもわれわれの売り上げが上がる。いずれの形でもポジティブに受け取っている。(HS)