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IPO2025年2月21日

IPO社長会見 フライヤー タイパやリスキリング追い風に高成長へ

フライヤー(323A)が2月20日、グロースに上場した。ビジネス書の要約コンテンツを法人や個人に月額課金で提供する「フライヤー」サービスが主力。初値は公開価格を73.2%上回る1,178円。上場当日の記者会見で大賀康史代表取締役CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

本の要約サービス……ビジネス書を10分程度で読める要約サービスを提供。音声版もあり、通勤時間や昼休み、寝る前などスキマ時間に利用する方が多い。主力は法人向けのフライヤービジネス。人材育成の目的で利用いただいている。読んだ感想や気づきなどをアウトプットして組織でメモを共有する「学びメモ」といった機能や、会社ならではの読書プログラムも用意。上場企業に義務付けられた「人的資本開示」に一人当たりの研修時間の開示項目があり、必要なデータを集約する機能も用意している。

出版社・著者とWin-Winの関係……ビジネスモデルはシンプル。当社は要約作成・公開の許諾を出版社・著者からいただき、本の販売促進機会を出版社・著者に提供している。当社と出版社・著者はWin-Winの関係で、ここでのお金のやり取りは原則無い(=著作権使用料の支払いは無し)。収益は契約法人企業からいただくサービス料で、会員数に応じて料金が変わる。要約する書籍は「革新性」、「明瞭性(わかりやすさ)」「応用性(実生活に生きる)」の3点を満たすものを選定。様々な種類の本が紹介されていることが読者メリットになるため、ビジネス書でも例えばマーケティング、ファイナンス、コミュニケーションだけでなく、哲学、歴史、科学などリベラルアーツに属するような本を選ばせていただいている。

強み・参入障壁……なかなかほかにないサービスのため創業から数年間は、要約コンテンツが書籍の売り上げや認知度向上にどのような効果があるのか見通しきれない状況だったが、今では190社と国内の主要出版社のほぼすべてと協力関係を構築している。書籍は年7万タイトルが出版され、認知度拡大が重要となる中、当社サービスは書籍の知名度拡大に貢献できるところがある。強みは、質の高いコンテンツを作り上げる組織的なノウハウ、出版社・著者・書店・利用企業などとのネットワーク、サービスの開発力。出版社や著者の理解・許諾があって要約作成・公開できるため時間をかけて信頼関係を築いてく必要がある。理解を得るには多くの方に周知していくユーザー網が必要、ユーザーを増やすにはコンテンツがたくさん必要、と鶏と卵が組み合わさっており、短期間にキャッチアップするのはなかなか難しいところが参入障壁になる。

高成長を持続・拡大……2年ほど前に上場に向けた体制が整い、収益の改善がスタート。今2025年2月期は第3四半期累計(3~11月)では赤字だが、第3四半期期間(9~11月)は黒字、通期でも黒字転換を見込んでいる。累計会員数は着実に増え120万人を突破、法人契約社数はここ伸びており1,150社となっている。大きな仕入れや大きな設備は必要なく、コンテンツを作りインターネットで提供しているため、売り上げのかなりの部分が利益に反映されるビジネスモデル。このため今後の利益拡大の主要ドライバーは売上高の拡大となり、それに向け投資をして成長を実現していきたい。このタイミングで具体的な中期的な数値目標までは申し上げることはできないが、法人事業が自動的に拡大できる体制が整ったらできるだけ早く上場したいと考えていた。上場はスタートオンラインと思っており、高成長をしっかり持続・拡大できるよう努めてまいりたい。

成長戦略……国を挙げて人的資本開示、人的資本経営を強化している。一方、GDP(国内総生産)に対する人材育成投資額の比率は諸外国に比べまだまだ低く、ホワイトスペースが無尽蔵にある。また、リスキリングも大企業を中心に強化、時間対効果の高い学習ニーズも高っており、タイパ(タイムパフォーマンス)トレンドは強まるといわれている。こうした中、知名度向上、法人営業網の基盤確立、出版社・書店との信頼関係など、サービス基盤を確立してきた。中期的にはフライヤービジネスの成長に注力する。既存顧客1社当たりの導入人数の拡大と、顧客数の拡大という2軸の成長がある。今、販売代理店網を構築しており、全国ネットで販売できる体制を整えている。また、AIを活用した高度なリコメンドエンジンなどサービスの高度化を図っていく。その先はサービス領域の拡大、顧客基盤の拡大に注力していく。われわれは人がしっかりまとめて磨き上げた要約を提供するのが中核。著作権の有効期限が切れた古典に関してはトライアルで要約をAIで行っているが、最新のエンジンをもってしても品質の高い要約までには距離がある。例えば、平家物語でストーリーよりも随分早めに戦死したりといったことが起きたりする。大事なところは人の目で確認し、信頼性の高いコンテンツに磨き上げる必要性があると思っている。(Q)

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