フーディソン(7114)が2022年12月16日、グロースに新規上場した。東京の市場を中心に全国各地で仕入れた鮮魚を中小の飲食店向けにネットで販売し、迅速に届ける自社ウェブサイト「魚ポチ」を運営。消費者向けの鮮魚直売店も東京都内で8店舗展開する。初値は公開価格と同値の2,300円。上場当日の記者会見で山本徹代表取締役CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
生鮮流通に新しい循環を……当社は「世界の食をもっと楽しく」をミッションに掲げ、生鮮流通に新しい循環をもたらしていくことを目指している。食の領域の中でも生鮮流通は特殊な存在であり、業界に関わる人の数やマーケットは非常に大きいが、一方で情報は紙ベースで伝達されているような状況で、デジタル情報の利活用がまだ全然できていない。われわれがプラットフォーマーになり、デジタル化された情報をつなぎ込んで、この業界の生産性を上げていける場をつくっていこうと考えている。
「魚ポチ」で市場の鮮魚を飲食店に……主力のBtoBコマース事業では、飲食店向けの鮮魚を中心とした仕入れサービス「魚ポチ」を展開している。市場で取引される鮮魚がスマホで簡単に注文でき、翌日にも店先に届くというサービスだ。当社は仲介手数料を取るのではなく、鮮魚を仕入れて販売し、その販売額が売り上げになるという卸売りのビジネスモデルになっている。全国の産地からも東京の豊洲市場からも調達する。東京の大田市場に自社の物流拠点を持つことで情報と物流をつなげ、食材のスムーズな仕入れを実現させた。豊洲市場と大田市場では仲卸の権利を持っており、競りに参加できるのが強みだ。
注力エリアは1都3県……「魚ポチ」の主な顧客は中小規模の飲食店。鮮魚を中心に、ウェブ上に約3,000種類の生鮮食品をそろえるサービスを提供しており、飲食店には少人数で業務を効率的に回すために役立ててもらっている。注力エリアは1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)で、大手チェーン店を除いた12万店くらいがターゲットとなる。1都3県であれば店が営業を終えた深夜3時までに注文してもらうと、翌営業日に合わせた配送ができる。それ以外の全国エリアでは深夜に注文すると翌々日に届く。現状の顧客は東京が多く、使ってもらっているのは3,200店ほどになる。早朝、市場に出向いて鮮魚の仕入れをしていた飲食店が、サービスの利便性から顧客になってくれている。市場までは行かずにスーパーマーケットなどで買っていた飲食店も「魚ポチ」の品ぞろえの多さを見て乗り換えてくれる。
高い参入障壁……市場から鮮魚を仕入れるには許認可が必要だ。地方の市場によっては、5年以上競りの経験をしていない社長の会社には競りの参加権を与えないというような、排他的なルールもあったりする。流通構造自体、非常に複雑だ。われわれはこうした参入障壁を乗り越えてきており、事業基盤は固いと考えている。
都内に鮮魚専門店も……当社のBtoCコマース事業では「sakana bacca(サカナバッカ)」という鮮魚専門店を都内に8店舗運営している。JRの協力もあり、駅ナカなどの通行量の多い場所に出店している。市場から直送で専門店ならではの鮮度の高い魚を多数そろえており、今後も利便性の高い立地に店舗を増やしていく計画だ。
フード人材バンク……当社のもう一つの事業として、「フード人材バンク」がある。こちらはフード業界の人材紹介エージェント。魚や肉の加工職人をスーパーマーケットに紹介したり、飲食店に人材を紹介したりしている。当社は自社で鮮魚小売店を経営しているため、業界への深い理解があり、人材の最適なマッチングが可能になっている。
高い設備投資効率……現状で顧客から注文を受けている売り上げのうち95%が水産品だ。水産品の特性として、棚卸資産の回転率が非常に高いことが言える。売り物の魚は深夜に届き、朝方には出ていくためだ。売上高を上げるために在庫を抱えている必要があるかというと、当然在庫も持っているが、設備投資効率は高い。
業績は順調に成長……18年3月期から22年3月期にかけて、売上高の年平均成長率は22%、売上総利益の年平均成長率は28%と、コロナの影響を乗り越え、大きく成長している。広告宣伝費率が低いのも強みだ。過去5年間の売上高に対しての広告宣伝費率は平均2%しかかけていない。今後もその方針は継続していく見込みで、それでも十分に成長していけると考えている。
調達資金は物流センター拡張に……「魚ポチ」の事業に関しては、供給量が増えていくにつれて重要になるのが物流センターの拡張だ。出荷する場所の容量をしっかり上げていくことが必要となる。上場で得た資金はまず、物流センターの整備に充てたい。また、「sakana bacca」の店を増やしていくので、その出店資金や人件費に活用していく。(YY)