ブッキングリゾート(324A)が2月21日、グロースに新規上場した。ITを活用し、予約プラットフォームなど宿泊施設の集客支援事業を実施している。初値は公開価格を25%上回る1,550円。上場当日の会見で、坂根正生代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
リアル宿泊業とネットを組み合わせ創業……全国の宿泊施設の集客支援をしており、とりわけ、宿泊自体が目的となるリゾート施設の集客支援を行っている。2013年に創業。もともと集客ではなく、ITを活用した事業をしていた。その過程で、グループ会社の宿泊施設を見てリアルの宿泊業とインターネットを組み合わせると非常に面白い事業ができるのではないかと、19年に集客支援事業を開始した。
完全集客支援施設がメイン……集客支援事業と直営宿泊事業をしており、売上高比率の88.5%が集客支援業で2つの形態がある。1つは「集客支援施設」で一般的なOTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)と同様に、施設側としては販路を複数持つ形態。もう一つは「完全集客支援施設」。当社のメインの事業で、宿泊施設の集客を全てお任せいただく。運営や開発の手伝いも無償で行う。集客支援サイトとして、「リゾートグランピングドットコム」と「いぬやど」の2つのプラットフォームを運営。併せて施設個別の予約サイトを立ち上げ、こちらから予約を獲得した分の手数料を請求している。重要KPIである宿泊支援先施設は345。客室を合算すると2,284室。顧客がリゾート施設のため、一施設当たりの売り上げが高単価になっている。予約サイトの認知度、サイトユーザー数も順調に伸びており、今4月期第1四半期(24年5~7月)、第2四半期(8~10月)とも1,200万人がサイトを訪れ旅行を検討している。
コンテンツ開発など実験の場……直営宿泊施設は現在、千葉県の南房総市と埼玉県の秩父市に2拠点3施設を展開している。ペットツーリズムに特化した施設と、アウトドアとリゾートビラの複合施設を展開。こちらは集客支援のために、直営施設でコンテンツを開発するなど実験の場として運営している。
一括支援で他社と差別化……当社の強みと特徴は3点。①ニッチ市場特化と宿泊施設の負担軽減による差別化戦略②宿泊施設の課題解決に向けた伴走型の支援③旅行動機を宿泊施設とする宿泊を目的地化する新規開発プロデュース。このうち①については、通常、宿泊施設が売り上げを上げるための施策として各種OTAでの掲載や広告を行う。当社は1棟貸しリゾートヴィラやグランピング施設が顧客の多くを占め、小型のため、各OTAで上位に表示されることはない。そのため、広告費用や手数料が経営を圧迫する。当社の完全集客支援は施設運営に負担がかからないように全体のサポートを無償で行っている。また、各種OTA、宿泊コンサル、サイト制作の要素を全て一括して支援しており、そこが他社と大きく差別化している。
12月にインバウンド向けホテル開始へ……今後、顧客対象施設の領域を拡大し、支援施設数の積み上げを行う。現在扱っている収益性の高いリゾートビラやグランピング施設の領域はこれまで通り拡充し、上乗せの形で旅館・ホテルの領域を拡大したい。当社にある施設に泊まりたくなるノウハウを既存のホテル・旅館に適用したい。次に、サービスの認知度拡大、利用者増加も図る。訪日旅行者の取り込みについてはまだ少し弱いが、今年取り組んでいきたい。12月に海外の方向けの直営ホテルを開始し、大きくインバウンドの集客支援をスタートさせたい。また、支援領域の拡大も進め、有償サービスの追加を考えている。昨今、施設の人材不足が課題となっており、無人施設の運営、予約管理、施設の物件の仲介、販売、M&Aなどの支援に領域を拡大。シナジーの高い領域の事業を展開し、宿泊業の総合支援会社を目指したい。(HS)