ブルーイノベーション(5597)が12月12日、グロースに新規上場した。ドローンなど自律制御ロボットのシステムを制御・管理するソフト「Blue Earth Platform」(BEP)などを手掛ける。IPO改革により、公開価格は仮条件の上限を初めて上回る1,584円。初値はさらに27.7%高い2,023円を付けた。上場当日の記者会見で熊田貴之代表取締役社長最高執行役員=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
主役を支えるインフラ……ドローン・ロボット業界の主役はハードウェアメーカーで、当社はそれを支えるインフラ会社だと思っていただくとイメージしやすい。ドローン・ロボットをつなぐシステムを開発したり、ドローンのパイロットを育成したり、ドローンが離発着するドローンポートのシステムを開発提供したりする。社会インフラの老朽化、地球温暖化に伴う災害の増加、労働人口の減少という様々な社会課題に対して注目したのが人のリソース不足。何とかドローン・ロボットで代替して貢献できないかという思いで事業に取り組んでいる。
GPSが無くても自動飛行……BEPがどのようなものかというと、ドローン・ロボットは位置情報が極めて重要なので、位置を特定、把握できるためのセンサーモジュールの開発とクラウド側からのリモートコントロール、ドローン・ロボットから情報を集めて管理、クラウド側のサーバーのアプリ開発もしている。BEPはセンサーモジュールとクラウドサーバーの両方。通常のドローンはGPSのサポートを受けて自動飛行するのが一般的。下水道やプラントの中ではGPSが入らないことがあり、市販のドローンだと自動航行できなくなる。当社は特殊環境下で自分の位置が特定、把握できるセンサーモジュールを開発。市販のドローンに搭載して特殊環境下でも自動航行できるドローンソリューションを提供する。BEPを軸にして、点検ソリューション、教育ソリューションを開発している。また、昨年末レベル4(都市部など有人地帯での目視外飛行)が解禁されたことで注目されている物流ソリューション、建物の中の自動化をするネクストソリューションの開発、検証を今行っている。
年々ソフトウェアが上昇……BEPを軸としたソフトウェア、パイロットサービス、ハードウェアを手掛けており、現在は売上高比率の多くをパイロットサービスが占めているが、年々ソフトウェアが上昇しており、利益率を押し上げている。近い将来の黒字化を目指して事業を進めている。コロナ禍の2020年に一時的に売り上げが下がったが、それ以降は顧客企業でのDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速し、当社も30~40%成長をしている。ソリューション別の売上高は点検と教育が6~7割、物流が2~3割。
全国にパイロットネットワーク……当社はソフト中心の会社で、ほとんどの競合はGPS環境下のドローンソリューションだが、私たちはGPSの入らない特殊環境で利用できる。ドローンも競合は1機しか運用できないが、BEPはドローン、ロボット、無人搬送車など多数のデバイスを接続できる。また、ほとんどのベンダーは自社パイロットが現場へ行くが、当社は全国に9万7,000人のパイロットネットワークを有しており、同時に数十拠点の運用が可能となっているのが強み。1顧客当たりのデバイスの数がどんどん増えており、アップセル、クロスセルで売り上げを拡大していくモデルを考えている。特に注力しているのが電力業界だが、他の業界にも同じようなモデルで横展開する準備を進めている。
大阪万博も商機に……当面は点検ソリューションが勢い良く伸びている。今まで、電力、エネルギー関係を中心に民間施設が多かったが、来期以降は道路、ダムなどの公共施設にも広げる。それに伴いパイロット育成にも力を入れる。また、レベル4解禁により、自動で離発着できるドローンポートの開発提供を加速していく。来年は大阪・関西万博があり、空飛ぶクルマやドローン物流が注目されるので、ドローンポートを武器として展開していこうと考えている。
ビジネスモデルとして確立……今回ロードショーを通して事業の評価をいただいた。当社が評価されたのは、ドローン業界でビジネスモデルがなかなか確立されていないなか、ハード、ソフト、パイロット運用サービスでストック型、フロー型のビジネスがある。ストック型が毎年上昇傾向にあり、少しずつ利益率が上がっている。一つのビジネスモデルとして確立しつつあるところが、評価をいただけたのではと推察している。
スイスメーカーと提携……海外からも電力業界などから多くの問い合わせをいただいており、特定した地域ごとに戦略をもって展開していこうと思っている。恐らく2、3年以内には可能性があるのでは。スイスのドローンメーカー、Flyability社と業務提携しており、まだ手動操縦がメインだが今後、自動化でいろいろ貢献していきたい。同社は世界60カ国に展開しており、当社の技術で協業できればいい。国内では国産ドローンメーカーとアライアンスを積極的に進めており、安全保障の観点で国産が推奨されるだろうから、そこにも力を入れていきたい。
販管費は抑制可能……今のところ販管費が大きく増える計画はない。ソフトの売り上げが安定化し、パイロットも外でアライアンスを組める体制がつくれているので人件費の大幅な投資がない。研究開発費もハードとは桁が違い、数億円規模。大きな投資は今は考えていない。(HS)