リスキル(291A・G)が12月17日、グロースに新規上場した。法人向けの研修事業を手掛ける。初値は公開価格を29.7%上回る4,840円。上場当日の記者会見で、松田航代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
早期からリスキリングの重要性に着目……1人でも多くの人に社会人教育を届けるというのが、われわれの基本的なミッション。このミッションを基に研修事業を中心に展開している。リスキルはリスキリングという言葉からきており、早い段階から重要な言葉になると思い、商標を獲得している。設立は2022年5月、上場期間についてはほぼ最短と証券会社から言われたが、実際にはその前から事業をしている。私の父が創業した日本ライセンスバンク、リカレントという会社があり、1986年に創業して社会人の「To C」(個人向け)向けにスクールを展開している。リーマンショックや東日本大震災でダメージを受け、当時マーケティングコンサルタントをしていた私が手伝いに入った。そこで「TO B」(法人向け)の新規事業を(2012年に)始め、良い形で成長したが「To C」とバッティングしたため、22年に会社を分割した。
リアル研修に注力……提供する研修はオーソドックスなもので2種類ある。1つはビジネス系で管理職向け、リーダシップ、マーケティング研修などいろいろ。もう一つはIT未経験者向けにエンジニアの育成をするテクノロジー研修。この2つの研修を「一社研修」「公開講座」「動画講座」の3つの方式でサービス展開している。よく動画がメインかと言われるが、始めたのが2、3年前で、売り上げは「一社研修」「公開講座」の方が大きい。リアルのオールドファッションな研修で成長しているのが特徴。われわれは集客、営業、テキスト作成、コンテンツ提供などを行い、当日の講師のみ外部の講師が行う。約300人の外部講師と契約している。コンテンツについては社内でフィードバック体制を整え、かなり多くの企業に使ってもらっており、フィードバックをいただくごとにブラッシュアップ。標準的なカリキュラムがどんどん磨かれている。5段階評価の4.7ぐらいの好評を得ている。
手軽かつ汎用性を志向……競争優位性は3つ。研修サービスの標準化、研修実施プロセスのDX(デジタルトランスフォーメーション)化、安価な価格設定の実現。研修業界では最大手のリクルートマネジメントソリューションズをはじめ、他社は独自色が強くて高価格帯の研修をしている。われわれはより多くの会社が手軽に簡単に研修できるよう汎用かつ低価格な研修を志向している。アパレル業界でユニクロ、家具業界でニトリがやったような業界のディスラプター(破壊者)に研修業界でなる。多くの顧客に受け入れられ、成長している。
今後も20~30%成長を目指す……事業開始以来、12年にわたって成長している。コロナ禍で競合は赤字になったところも出たが、われわれはデジタル系が比較的強く、売り上げ成長はとまることなく継続している。M&Aにたよらず、オーガニックに成長し、他社から(マーケットシェアを)取っていく方針。今後も20~30%成長をできる限り長く維持していきたい。ビジネス研修が成長ドライバーとなっており、40~50%成長している。主要KPIに顧客数を設定しておりこちらも30~40%成長している。国内の研修市場は約4,000億円といわれ、当社のシェアはまだ1%もなく、拡大の余地はかなり大きいと思っている。
アジア進出も本格稼働へ……成長戦略で注力するポイントは、人員の増加、システムの強化、アジア圏への展開の3点。調達資金もこれらに充てる。アジア圏ではシンガポールとマレーシアで実験的にマーケティングしており、どちらかの国を選んで、来年度から本格稼働する。社運を賭けて進出するわけでなく、投資判断、金額をコントロールしながら展開していく。少子化もあるので、今後20年、30年を見据えた時に、大きな要素となるだろう。現段階では大きな課題は見つかっていない。(HS)