南海化学(4040)が4月20日、スタンダードに新規上場した。創業117年の老舗化学品メーカー。中山製鋼所(5408・P)傘下から2013年に独立した。初値は公開価格を45.5%上回る2,533円。上場当日の記者会見で、菅野秀夫代表取締役社長執行役員=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
苛性ソーダでいろいろな商品製造……どんな会社かというと、NaCl(塩)に電気をぶつけてできるのが苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)と水素と塩素。これらを使っていろいろな商品を作っている。例えば機能化学品では、サントリーがグルコサミンの製造販売をしているが、実際には南海化学の工場で受託製造をしている。花王(4452・P)は塩素系の洗剤を作るときに、最後に南海化学の工場で仕上げ、レシピをもらって受託製造をしている。(家庭用洗剤の)アタックは当社で作っている。
大手競合とはマーケットが違う……当社の強みは3つある。“ニッチ”と“立地”が1つ目と2つ目。ニッチは、小ロットとか、液でほしいといった顧客のニーズに応える。われわれは年間3万数千トンしか作っておらず、100万トン作るような大ロットの競合とはマーケットが違う。また、競合がなかなか参入しない、もしくはやめた商品を作っている。クロルピクリンという土壌改良剤や、プールの殺菌剤に使う高度さらし粉は南海化学が日本のシェアナンバーワン。大手が撤退した結果、約40%のシェアとなり、全国展開や輸出もしている。
和歌山・青岸工場は宝の島……“立地”は距離。当社の製造拠点は和歌山、土佐(高知県)に工場があり、中国にもある。和歌山のマザー工場の近くにはいろいろな顧客がいる。実際に一番近いのは花王。苛性ソーダは物流費が高いので(距離が短いのは有利)。もう一つ、和歌山(港)の青岸工場(付近)には住民がいない。環境アセスメントを取るのが易しい。しかも船のオペレーションもでき、陸にもつながっている。産業の宝の島といわれ、エア・ウォーター(4088・P)や三和油化工業 (4125・S)とジョイントベンチャーを稼働している。3つ目の強みは着実な経営。中山製鋼所から独立した時に不採算事業から脱却し、新しい事業を大きくした。
物産、商事と塩製造……中期の取り組みとしては既存事業の強化と世の中のためになる環境ビジネスを拡大する。まず天日塩。三菱商事(8058・P)、三井物産(8031・P)と組んで、49品目の塩を製造、販売する。太陽光で作っているので、(競合と違い)環境にやさしい。
リサイクル事業にも注力……また、ニッチ市場を生かしながら、リサイクル事業を展開する。まず廃硫酸、脱塩素のリサイクル。硫酸の廃液は170万トンあるが、リサイクルに回っているのは7万トン。そのうち当社は3.3万トンをリサイクルしている。今まで燃やしたり、埋めたりしていたがコストが高くなり、リサイクル市場が急激に伸びている。半導体からの廃液が多いので、それを当社で引き取ってリサイクルする。脱塩素はセメントメーカーと一緒にやっている。次に電池領域のリサイクル。電池自身でなく、電池を作るときに出てくる廃液をリサイクルする。蓄電池用で今のところ競合はおらず、すぐにカネにならないが、5年かけて技術確立に集中する。
樹脂で東レと提携……それからPPS樹脂。すごく軽く、一番使われているのは自動車の軽量化。それから最近急激に増えているのはメガネのフレーム。これから大きく伸びる。この原料は水硫化ソーダ。水素と硫酸と活性ソーダでこの3つの原料を持っているのは日本では南海化学だけ。そこに目を付けたのが東レ(3402・P)で業務提携をしている。苛性ソーダは今3万2,000トンぐらい、PPSはそのうちの3,000~4,000トン。水硫化ソーダをもっと作るとなれば増産する。
中期経営計画に期待してほしい……(23年3月期の予想は)売上高11%増で、伸びているのは環境リサイクル事業。予定ではあるが3月期決算の公表とともに中期経営計画で何をどこまで伸ばして、金額はいくらなのかと開示する。期待してて下さい。(HS)