売れるネット広告社(9235)が10月23日、グロース市場に新規上場した。D2C(ネット通販)企業に対し、ネット広告の費用対効果を改善するノウハウを提供している。A/Bテスト(自社商材を活用し、複数のネット広告でどちらが効果があるかの比較)が強み。初値は公開価格を8%下回る837円。上場当日の記者会見で、加藤公一レオ代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
自動化が大きなポイント……ネット広告は競争が厳しい市場だが、プレイヤーの9割がアナログなデジタルマーケティングをしている。われわれは全部デジタル化、自動化したのが大きなポイント。今までサイト一つを2カ月かけて作っていたのが、当社のツールに10項目入れれば3分間でベースのクリエイティブ、システムが出来上がる。また、今までは広告運用のチームがアナログで発注、入稿を繰り返しているが、われわれはクライアントの通販会社と媒体社がプラットフォーム上でマッチングできるよう自動化した。今までは労働集約型だが、われわれは人がいらないよう自動化しているので、人件費もそんな増えない。今後もそんなに人は増やさない。
他業種や海外へも展開へ……調達資金の使い道は主に3つ。1つは今までは営業活動をSNS(交流サイト)でしており、費用を掛けなかった。今後はネット広告で販促する。2つ目は顧客の満足度を上げるための開発に注力する。今必要な機能を実装するのはもちろんだが、ネット通販以外の金融、不動産、自動車など他の業界にツールを横展開させるための開発費。あとは上場するまで言えなかったが、海外展開を考えている。ベトナム、台湾で今のツールを多言語化していきたい。
社内人材を公募……海外については来月から人材を社内公募する。市場は日本の方が大きいが、台湾やベトナムは伸び率が高く、競合もいない。特にベトナムはD2C企業もランディングページを知らないところが多く、われわれが「型」を作ってシェアをとる。数年後には海外の売り上げ比率を50%以上にしたい。既存事業以外の産業、媒体についても、担当者を社内公募する。他の産業で言えばネット広告市場で一番シェアを持っているのはD2Cで、2番目は金融や人材。どちらのほうが成長率が高いかなどで判断する。他の媒体は「売れるテレビ広告社」「売れる新聞広告社」のようなものを考えている。マスメディア広告市場は減少しているが、シェアの1%を取るだけでも数百億円の売り上げになるので、攻めていきたい。
AIは業務効率化のため……AIは事実ベースのデータを取ってこれないため、チャットGPTをみても間違っていることが多い。アナログな広告代理店もマーケティングの意識高い系の担当者が決めている。われわれはA/Bテストによる事実をベースにしている。AIを活用するなら、業務効率化のためだろう。A/Bテストの結果を受けて、今までは開発部隊がプログラミングしていたが、それを自動化する。後は、クライアントと媒体社のマッチングもAIが相性をより分析して精度を上げるなど、より人を使わないためにAIを活用するイメージ。
M&Aも推進……水面下でM&A業者と話している。今探しているのは3つの業態。1つ目は基幹システムの会社。われわれはランディングページに強いが、スタートアップ企業などは基幹システムまでほしいという需要がある。2つ目はオフラインの会社。例えばチラシの企業で、取引先が多いところ。そこの取引先にわれわれのツールの営業ができ、ネットで得たノウハウをチラシや新聞にも持っていける。3つ目は海外。特にベトナムではベトナム資本の企業が必要になるのでM&Aをしたい。(HS)