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IPO2024年10月24日

IPO社長会見 東京地下鉄 安定株でありつつも、成長を目指す 前例にとらわれず成長分野に取り組み、非鉄道事業も強化

東京地下鉄(9023)が10月23日、プライムに上場。公開価格を35.8%上回る1,630円で初値を付けた。当日の記者会見で山村明義代表取締役社長=写真右=は、「企業価値の向上に取り組み、お客さまをはじめ多くのステークホルダーの皆さまに信頼され、選択され、支持される企業グループを目指す」とあいさつし、質疑応答に移った。主なやり取りは次の通り。

――初値の受け止め。また、売り出しに当たり海外機関投資家の需要倍率が35倍超、個人投資家は10倍、国内機関投資家も20倍強と聞く。

「多くの皆さまに評価いただいた結果と思っている」

――上場のメリットをどう生かしていくか。

「上場は一層の経営改革のための基盤づくりと捉えている。“経営の見える化”が進むことで社員も行動の成果が実感できるためエンゲージメントも向上しよう。様々な企業との連携もさらに強まろう」
「コロナ禍で鉄道事業以外の柱を持つべきと痛感した。上場を機に不動産事業、流通事業など非鉄道事業を強化する」

――鉄道収入が全体の9割を占める。不動産事業の今後の戦略、割合をどの程度に高めるのか。

「道路下を地下鉄が通っていることから土地はあまり保有していないが、ビジネススタイルは4つ。1つ目は保有する土地の開発。東急不動産と共同開発した東急プラザ原宿・ハラカド、家族住宅にしていた不動産を高齢者施設に転貸といった例がある。2つ目は成長の種になる土地の取得。バリアフリー法を受けエレベーター設置に向け地上の用地を確保する際、少し大きめに用地を取得してきた。こうした土地の活用を進めていく。具体的には表参道エリアや銀座エリアなど。3つ目は成長投資。1,000億円の設備投資を予定している。このうち30%弱を成長投資に振り向ける予定にあり、その多くを不動産取得に充て開発を掛ける。4つ目はREIT(不動産投資信託)」
「(2025~27年を対象とする)次期中期計画に向けて現在アイデアを収集・集計している。いずれ規模感が出てこようが、当面は事業別構成目標はおそらく出さず、まずはできるところからどんどん展開し、その積み上がりを大きくしていくスタンスとなろう」

――私募REITを組成すると聞いた。

「保有する賃貸用不動産を私募REITに提供する予定。簿価700億円、含み益600億円の合計1,300億円の資産があり、当初数年は数百億円規模で運用。私募REITへの売却で得た資金を不動産事業に投入し、ビジネスとして循環型で大きくしていく」

――国と東京都がIPOに伴う売り出しで保有株の半数を売却した。残り半分について。21年の交通政策審議会の答申に、地下鉄延伸計画の整備を確実なものにする観点から当面保有し続けるという文言があった。

「新線建設費は2路線合わせて4,000億円。うち6割が補助金、4割は都市鉄道融資。後者はいわゆる公的融資で利率が低い。こうした公的助成の充実が地下鉄建設の前提のため、建設期間中は公的主体が持つという意味合いで2分の1保有が位置付けられた。私たちとしてはこの趣旨にのっとり、2分の1保有が建設期間中は続くと認識している。その後の売却については国と都が協議するとあり、協議の状況を注視していく」

――都営地下鉄との一元化について。今後の方向性。

「21年に交通政策審議会の答申が出され、株式上場と新線建設を一体不可分で進めることになった。この議論の中で一元化について全く触れられていない。上場に際して売り出し人の東京都も全く触れられなかった。従って現段階では一元化は計画にない」

――市場では安定株と言われている。御社としては安定株としてみてもらいたいのか、それとも成長株として期待してほしいのか。

「現段階では収益は鉄道が中心。東京はまだ人口が増えており、都市開発が活発、インバウンドも好調。これを踏まえると今後も鉄道は安定、かつ、ある程度成長していく。不動産事業や流通事業とのシナジーも見込める。安定株でありつつも、成長を目指す」

――JR東日本が金融事業に進出した。御社もそのようなことを考えているか。

「成長分野に対するアイデアを次期中計策定に向けて現在社員から募っている。来年の年度が替わったところでは発表できると思うが、前例にとらわれないアイデアがいろいろ出ている。その中に金融事業があるかどうか定かではないが、そういったことも先入観なしに取り組んでいければと思っている」
「東京メトロを良くしていくことが、東京を良くしていくことで、日本にとっても良いことになる。全てのステークホルダーをいつも念頭に置いており、ステークホルダーに貢献していくために収益性や成長性を高めていく。そのために一層の経営改革を推進していくという思いでいっぱい。どちらかと言えば過去のことは考えず、これからのことを考えていきたい」(Q)

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