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IPO2023年5月12日

IPO社長会見 楽天銀行 楽天エコシステムを最大限活用

楽天銀行(5838)が4月21日、東証プライムに新規上場した。口座数と預金残高で日本最大のインターネット銀行。初値は公開価格を32%上回る1,856円を付け、その後一時1,965円まで上昇する場面もあった。上場当日の記者会見で永井啓之代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

国内No.1のデジタルバンク……楽天銀行は安心安全で最も有益な銀行を目指し、楽天グループの強みを生かしながら特徴あるサービスを展開している。主な連結子会社として、国内で信託業務を営む楽天信託、台湾でインターネットの銀行事業を行う楽天国際商業銀行がある。楽天グループの一員としてフィンテック領域におけるグローバルイノベーションカンパニーになることをビジョンとして掲げ、企業価値を高めながら社会に貢献し、社会との共生を目指していく。2021年1月にはデジタルバンクとして初めて1,000万口座を突破。昨年12月末時点の口座数1,338万口座、預金残高は8.8兆円と、ともに日本ナンバーワンのデジタルバンクとなっている。

利便性とお得さを訴求……ビジネスの柱は個人のお客さま向けのビジネス、法人のお客さま、資産の運用ビジネスの3つ。個人向けは楽天銀行アプリを通じてほぼ全ての銀行サービスをワンストップで提供するということを強みにして事業を拡大している。楽天グループの会員基盤にリーチし、利便性とわれわれのサービスを使えば使うほどにポイントがたまるというお得さを示すことによってお客さまを獲得し、そのお客さまのメイン口座を獲得している。

営業担当による総合コンサルティング……法人のビジネスについては、われわれはネットのデジタルバンクなので24時間365日サービスを提供している。例えば、中小企業のお客様は経営者の方が一人何役も務めている。そういう方にとっては、朝の9時から夕方3時までの間に銀行の店舗に行くということは不可能に近い。いつでもどこにいてもサービスを利用できるという利便性を提供している。もう一つ特徴として、法人のお客さまには営業担当者が付いている。経営者の方としっかり面談をして経営課題を把握した上で、そのお客様の課題認識に対してソリューション提案をすることによりビジネスを伸ばしていく考え。

ワンストップの証券化サービス……資産運用ビジネスでは子会社の楽天信託が非常に重要であり、我々は証券化、流動化のサービスをワンストップで提供する能力がある。お客さまが金銭債権や不動産、もしくは資金化したいプロジェクトをお持ちの場合に楽天銀行がその証券化のご提案をし、スキームを全て構成することができる。その上で、楽天信託にこれらをお預けいただき、そこから生まれたアセットについてはわれわれ楽天銀行が投資家として購入する。例えば証券会社が証券化のアレンジをする際には投資家を見つけるというプロセスが必要になるが、われわれは自分たちで証券化のアレンジをして購入することができるので、資金調達をしたいお客さまからすると、楽天銀行に一声かければワンストップで全てのことが行える。

非金利収益を生み出せる素地……収益のうち4割強が非金利収益、6割弱が金利収益ということで、銀行としては非金利収益の割合が比較的高い。1億人超の楽天エコシステムの会員にリーチして新規の会員を効率よく獲得し、そのメイン口座に対してわれわれの銀行のサービスだけでなく、楽天グループのサービスもクロスセルすることによって、非金利収益を生み出している。

中長期ビジョン……27年3月期に2,500万口座、預金残高20兆円、PL(損益計算書)では経常収益2,000億円、経常利益700億円を目指す計画を発表している。23年3月期の1Q~3Qまでの累積では、経常収益で前年比12.6%増の891億円、経常利益で同37.3%増の285億円とかなり高い成長を実現できている。また、ROE(自己資本利益率)も14%と高い資本効率性を示している。ROEについては非常に重要な指標と捉えており、改善・向上に向けて今後さらに努力していくが、一方でやはり銀行である限り預金者保護は重要であり、適正な自己資本比率を維持することは必須。投資家の皆さんに満足いただけるROEの実現と、預金者の皆さまに安心していただける自己資本比率の維持を両立する。

データ活用による収益機会の拡大……本人確認が済んでいる多種多様な個人データを楽天銀行と同水準で保持しているプレイヤーはそれほど多くない。こうした個人データを使い、今までになかったような広告ビジネスが展開していけると考えており、既に広告のクライアントから様々な話をいただいているというのが実情。このデータは広告だけでなく、マーケティング面でも非常に大きな威力を発揮する。

BaaSを通じた新たな顧客体験……BaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)は1つは地銀向け、もう1つは事業会社と組んで実現している。後者は今年1月の第一生命、昨年12月にJR東日本およびビューカードとの取り組みを発表した。銀行では持ち得ないユニークで強力なアセットやノウハウをお持ちの企業と連携をすることで、ユーザー視点から見たときに今までになかったような全く新しいユーザー体験を生み出せるのであれば、これは社会にとって非常に価値のあることだと思う。そうした目的で行っているため、数を追うつもりは全くない。

親子上場の是非……最大の問題は少数株主さまの利益が守られるか、これが非常に大きなことだと思っている。われわれはもともと楽天グループの100%子会社だったが、金融行政面と経営の独立性を従来から求められてきた。独立性を守るための仕組みも既に実際にわれわれの中に構築され、長年運用してきたという実績があるので、これを運用していくことによって少数株主さまの利益を害するようなことがない事業運営および意思決定ができる。ビジネス面で楽天エコシステムを活用して事業を拡大し、収益性を高め、企業価値を上げていけば、少数株主さまの利益にもかなう。

公募増資、追加売り出しの可能性について……公募増資については既に必要な資本調達はできているので、これ以上の公募増資は現行計画を前提とすると27年3月までは必要ないと考えている。一方、売り出しについては親会社が決めることなので、われわれが決めるわけにはいかないが、楽天グループは今回のIPOにあたり、楽天銀行を連結子会社のステータスを維持した上で上場させると発表している。これを前提と考えると、楽天グループとしてここから売り出しをすることは現時点で私としてはあまり想定はしていない。(SS)

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