黒田グループ(287A)が12月17日、東証スタンダードに上場した。国内外で電子部品や電気材料を取り扱う商社事業と液晶ディスプレイやハードディスク関連、自動車部品、電設資材などニッチ分野に特化した製造事業を手掛ける。前身は東証1部に上場していた黒田電気だ。初値は公開価格700円を26.4%上回る885円だった。上場当日の会見で細川浩一代表取締役社長執行役員=写真=は同社の概要や今後の戦略などを語った。
製造業事業で新規投資……2018年の非公開化以降、LBO(レバレッジ・バイ・アウト)ローンの返済を優先しながら、既存の事業に対しては数年先を見据え、新たな投資も行ってきた。製造子会社3社の売却などのリソースの絞り込み、財務基盤の強化も整い、10年、5年先を見据え、製造事業と商社事業の規模を意識しながら、来年度から始まる3カ年計画では新たな柱となる製造事業への投資も考えている。次の柱になる事業について、いろいろな事業分野を含めイメージしているのだが、この上場を機に、今年度内にチームを立ち上げて具体的な考察に入る予定だ。当社の今のベースを強くするための方向で、取引先とも相談しながらやっていく。ある程度絞り込めてはいるが、それを具体的に3つぐらいに絞り込み、今ある事業と重ならない分野に進出する考えだ。「何を」からスタートせずに私たちが持っている技術が生きる分野で、トップラインをどんどん増やすというより、市場規模がある程度あって100億円強の事業を取りにいく。
リスクを取って次の事業へ……ファンドの傘下に入って以降、商社と製造業の売上高2対1程度を目指してやってきた。商社の方では収益性の低い仕事を取らないなどの対策を行ってきた。LBOローンの返済とグループ全体の構造転換を並行してやってきたので、なかなか新しいことには取り組めなかったが、今は既存事業を漕ぎながらリスクを取って次の事業に取り組めるベースができたので、それをできるだけ早い段階で実現したい。
再上場に当たって……非公開化のときも社長をしていた。黒田電気のいいところを残し、いわゆる再上場ということではなく、フレッシュスタート、初めての上場のつもりで取り組むよう、役職員にもお願いしてやってきた。本日の上場も新鮮な気持ちだ。非公開化によって、上場したままではできなかった構造改革ができたのではないかと思っている。そして、今後10年、5年を見据えた場合、現在の形態は到達点ではなく、通過点であると思っている。
株主還元について……非公開化するときに決まっていたことが2つあった。LBOローンのためにマイナスになった自己資本比率を40%前後に持ってゆくこと。手元流動性も低かったが月商の1カ月程度を目指して利益の質の改善を図ってきた。急激に成長する企業ではないが、きちっとキャッシュを生み出す基盤ができているので、最終的にDOE(株主資本配当率)7%に落ち着いた。財務規律に沿って、きちっと説明できるかたちで株主還元を進めていきたい。
プライム市場へのチャレンジ……私の代でのチャレンジはないと思うが次の世代には挑戦してもらいたい。そのためには売り上げ、利益ともに、今の事業規模の2倍か、それが確実に見えることが必要だ。(M)