AnyMind Group(5027)が3月29日、東証グロースに新規上場した。同社はアジアを拠点にEC(電子商取引)、マーケティング、生産管理、物流などの領域で独自プラットフォームを開発・提供。昨年3月、12月と2度の上場申請取り下げを経て、満を持しての上場となった。初値は公開価格(1,000円)と同値発進。上場当日の記者会見で十河宏輔代表取締役CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
確立された多国間オペレーション……2016年にシンガポールにて創業。東南アジアやインドを中心に、現在までに13カ国・地域に展開している。事業および国単位で責任者を置き、お互いに密に連携を取りながらローカライズやノウハウの共有を両立する体制を実現している。また、国別・事業別のKPI管理を徹底することで需要動向や課題をリアルタイムに把握・改善し、M&Aや新規事業をスムーズにグローバルで展開できることも強み。
プロダクト拡大で安定成長……ブランドコマースでは商品の生産からEC販売、物流、マーケティングに至るまでのプロセスを支援するソフトウエアやサービスなどを多数展開し、ブランド成長を一気通貫で支援。主にマーケティングのプラットフォームとEC、D2Cに関するプラットフォーム、2つのソリューションを提供している。一方、パートナーグロースはWebメディアやモバイルアプリといったオンラインのパブリッシャーに対して広告収益の支援を行う「AnyManager」というプロダクトを提供。もう1つはクリエイター、いわゆるYouTuberやTikTokなどで活躍するクリエイターさんの成長支援を行うものが「AnyCreator」というプロダクトとなっている。もともとはマーケティングのテクノロジーのプラットフォームで創業した会社だが、周辺領域のサービス、プロダクトを拡大することによって安定的な事業成長を実現してきた。
利益創出フェーズへ移行……創業以来、年平均50%強の成長を維持しており、22年12月期の売り上げに関しては248億円となり、そのうち海外売り上げ比率が約53%となっている。特にD2C、Eコマースの事業の立ち上げによってしっかりと顧客基盤の拡大が実現できた。売上総利益に関しては前年度比48%の成長、23年度に関しても売上総利益で30%を超える成長を継続する見込み。利益は年々改善傾向にあり、22年12月期からは営業利益ベースで黒字転換している。23年以降もアジア市場において成長投資を継続していくが、成長性と利益のバランスをしっかり取りながら、事業の生産性を改善していくことで利益向上に努めていきたい。
強力なネットワークとローカルチーム……従業員数は直近1,300人を超えた。全従業員数の70%以上はタイ、ベトナム、インド、インドネシアなどのアジア主要国の現地メンバーで構成されている。強いローカルチームを持つことによって、各国のインフルエンサーやパブリッシャーなどのローカルネットワークを拡大して、提供するサービスのローカライズを追求することが可能となっている。また、日本、インド、タイ、ベトナムの4カ国に開発体制を築いている点が特徴で、これにより全世界から優秀なエンジニアを採用・確保できる体制となっている。
成長戦略……ブランド、メディア、パブリッシャー、インフルエンサーなどの複数のクライアントに対し、複数プロダクト、複数チームを置いて掛け合わせて提供していくことでクロスセル・アップセルを実現できると考えている。我々は成長産業×成長している国々でビジネス展開しているので、マーケット自体の成長をベースに、中長期で成長を実現していけると考えている。特に足元で非常に高い成長を続けているD2C、ECの領域に関しては、当社の事業の軸になりつつある。アジアにおいてEC市場自体が急速に成長しており、テクノロジーの領域においてはまだ圧倒的なコンペ(コンペジター:競争相手)はいないので、アジアのリーディング企業のポジションをしっかりと取り、事業拡大に注力していきたい。中長期(3~5年)では、売上高は少なくともYonYで30%ぐらいの成長率を維持するとともに、しっかり利益も改善しながらその成長率を維持していくことを目指す。(SS)