AIソフトウェアの開発・実装支援、AIを導入する企業向けにDX(デジタルトランスフォーメーション)/AI人材育成・組織開発などによる事業支援などを行っているAVILEN(5591・G)が9月27日、グロース市場に上場した。初値は公開価格2,180円を17.0%上回る2,482円と静かなスタートとなった。上場当日の会見で、高橋光太郎代表取締役=写真=は事業内容や今後の成長戦略などについて語った。
幅広い技術コアモジュールに強み……私たちは「最新のテクノロジーを、多くの人へ」をビジョンに掲げ、AIにフォーカスして事業を展開している。AIソフトウエアとビルドアップパッケージを提供するAIソリューション事業の単一セグメントの中で中心になるのがカスタマイズ型ソフトウエアだ。幅広い技術コアモジュールを活用し、特定の業界に限定されない幅広い顧客の課題を捉え、効率的かつマルチモーダルなソフト開発を実現している。技術の最新性を担保している点が強みだ。
実例を挙げると特殊紙面認識の「Cognea(コグニア)」という技術コアモジュールを使い、機械部品卸の大手企業向けに、機械図面から設計情報を抽出する処理能力を30倍にスケールアップさせた。これは製造業界の設計指示コストを大幅に削減するポテンシャルを有する技術だ。また、大手金融機関向けに不動産鑑定士の処理能力を拡張し、推定200億円以上の価値を創出するポテンシャルを持つマルチモーダルAIを提供、数時間の作業を5分以内に短縮したという例もある。
成長市場のボトルネックをビルドアップパッケージで解消……現在1.4兆円のAIビジネス市場は、2030年に2.6兆円に、生成AIを含めるともっと大きく成長する見込みだ。こうした中、慢性的な人材不足がAI導入時のボトルネックとなっている。これからAIに取り組む企業は深刻な人手不足に対応して行かなければならないが、この潜在的な市場に対してデジタル人材や組織を育成するビルドアップパッケージを提供できる。
当社の技術力の高さを支える組織として「AVILEN DS-Hub」がある。合格率6%以下という独自のスクリーニングテストを通過した機械学習研究者のコミュニティで、197名のデータサイエンティストが在籍している。即戦力の正社員獲得、採用コストの低減、高いエンゲージメントなど、「優秀な人材」が「優秀な人材」を招くエコサイクルが実現できている。
「真の一気通貫モデル」を提供……ビルドアップパッケージにより、企業のテクノロジー活用アビリティを強化、AI搭載ソフトウエアによる課題解決まで「真の一気通貫モデル」を提供できる。そして、顧客内における他部門への拡大、商品のクロスセル、アップセルで80%以上の継続率を実現できている。継続率の高さと新規顧客数の拡大で安定的な積み上げ型成長を実現できている。生成AIではクライアントの文書データベースに基づく自動FAQソフト「ChatMee Pro」を5月にリリース、多くの企業に導入が進んでいる。
創業以来、実質黒字を継続し、20~22年度の売上高平均成長率は83.7%、営業利益成長率は67.7%だ。22年12月期の取引社数は前年度比50%増の276社、新規取引社数は同9.3%増の125社だった。
3つのエンジンで成長……中期的に3つのエンジンでの成長戦略を考えている。一つ目は確立済み事業モデルで既存取引先のLTV(生涯顧客価値)を最大化させること、二つ目は現在取り組んでいるChatMee Proなどパッケージ型ソフトを既存アカウントへの営業・販売、大塚商会など強力な販売パートナーを通じての拡販だ。三つ目は、M&Aによる非連続成長だ。自社のケイパビリティ拡充やAI活用による買収先のバリューアップを目的とした実施出、実績の積み上げを目指す。