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IPO2024年6月18日

IPO社長会見 Chordia Therapeutics(コーディア セラピューティクス) 日本発の研究開発型の製薬会社へ

Chordia Therapeutics(190A)が6月14日、東証グロースに新規上場した。同社はがん領域の研究開発に特化したバイオベンチャー企業。初値は公開価格を66.6%上回る255円だった。上場当日の記者会見で三宅洋代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

研究開発型のバイオテック企業……現在社員は22名、うち12名が博士号を持つ少数精鋭の部隊。自社において探索研究から臨床研究の第2相試験までを実施することを前提としており、それ以降は製薬メーカーに導出を行う。私たちは希少がんを狙った開発を進めているので、第2相臨床試験の結果を持って条件付きの迅速承認をもらえる可能性が高い。その場合、国内での販売は戦略的ビジネスパートナー(メディパルHDと事業提携)の力を借りながら自社で進めていく。そうすることによって研究から販売までを一貫して手掛ける、利益率の高い製薬会社へと成長していく。

RNA制御ストレスを抗がん薬に……私たちが手掛けるパイプラインはがんの弱点をたたく、いわゆるプレシジョン・オンコロジー(がん領域の精密医療)の考えに基づいて見出されたもの。全てが既存の抗がん薬とは全く異なる新しい働きをするファースト・イン・クラス(画期的医薬品)の薬になる可能性を秘めている。がんの弱点であるRNA制御ストレスが見つかったのは2011年と比較的最近のことで、RNA制御ストレスを増大させることによってがん細胞を殺すような薬はまだ1つも生み出されていない。われわれはこのブルーオーシャンで先頭を走っている。

適応拡大で製品価値最大化……リードパイプラインであるCTX―712は経口で投与可能な低分子化合物であり、CLKというたんぱく質の機能を阻害する。第1相試験では60名の患者に投薬を行い、卵巣がんと白血病(AML/MDS)で奏功が認められた。奏効率はそれぞれ28.6%、42.9%で、この数値は既に上市している大手メーカー製の抗がん薬が示している有効性と比べても同等以上だった。現在は一日でも早い上市を目指し、まずは再発難治性の白血病での開発を優先させている。早ければ26年下半期に条件付きの承認申請を仕掛ける想定。それと並行もしくはその後に卵巣がんや他の種類の白血病などで適応を拡大していくことにより、CTX―712の製品価値の最大化を図っていく戦略。CLK阻害薬は米企業3社も開発に取り組んでいるが、開発ステージでわれわれは5年以上先を走っており、このままリードを保って上市まで持っていけるという強い自信を持っている。

小野薬品に最大500億円超の条件で導出……2つ目のパイプラインであるCTX―177は、20年に全世界での権利を小野薬品に導出している。その際の経済条件は契約一時金で8億円、最初の開発マイルストンで25億円。合計33億円を当社は既に受領している。このうちの開発マイルストン25億円を受領した前23年8月期は、創業以来初の黒字を計上することができた。そのほかに開発の進捗状況もしくは販売の状況に応じて最大で496億円のマイルストンを受領する権利を当社は有している。また、上市された場合には一ケタ後半~二ケタ後半の世界中での売上高に応じたロイヤリティを受領する権利を有している。なお、当期における小野薬品に導出したパイプラインの開発マイルストンの達成については、現時点で予定されていない。

マイルストン達成状況と今後の想定……CTX―712の国内の第1相臨床試験、こちらは患者の登録を完了してその結果を4月の米国がん学会で発表している。また、3、4つ目のパイプラインの前臨床試験の結果も同学会で発表した。今後はまず今年の下半期にかけてCTX―712のオーファンドラッグデザイネーションを申請していく。これは米国における希少疾病用医薬品の指定。現在仕掛けている開発が急性骨髄性白血病だが、これは希少がんになるので申請してしっかりと取っていくことができると考えている。また、米国の第1/2相臨床試験の第1相パートの最初の中間成績を、早ければ今年12月の米国血液学会で発表する。これは間に合うかどうか本当にギリギリのところだとは思うが、もしこの12月に間に合わなければ来年4月の米国がん学会もしくは6月の臨床腫瘍学会で発表する想定。そのため、このマイルストンだけ少し幅を持って達成時期をみている。その後、この第1/2相臨床試験の第2相パートの開始は25年、ちょうど今から一年後ぐらいに開始できる想定。これは米国だけではなく、日本の患者にも参加いただき日米でのグローバル試験に広げていく想定。この第2相パートの有効性のデータが今から2年後、26年中盤に取れてくる想定。その結果を使って26年下半期に条件付きの迅速承認を仕掛けていく計画だ。(SS)

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