dely(299A・G)が12月19日、東証グロースに新規上場した。LINEヤフー(4689・P)子会社で、国内最大級のレシピ動画サービス「クラシル」を運営。初値は公開価格を16.6%下回る1,001円だった。上場当日の記者会見で堀江裕介代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
クラシル経済圏……3.11(東日本大震災)を契機にこの会社の創業を決意した。現在は「ブランド」「ポイント」「ユーザー基盤」をもとに、クラシルを中心とした経済圏のサービスを運営。この経済圏をさらに広げるため、今後フィンテックなど新しい領域にも足を運んでいく。主にわれわれが解決している課題は、メーカーや小売企業の「集客」「人材不足」「デジタル化」。メディアは広告収益・有料課金収益、購買(販促)やHRのジャンルは成果報酬型の収益モデルとなっており、現在は購買やHRをより伸ばすことで安定的なリカーリング性の高い収益に移行している段階にある。
メディアから販促へ領域拡大……多くのメディア企業が上場後に成長率が鈍ってしまうという課題をわれわれも認識していた。きちんとメディア以外の売り上げの収益をつくることによって、堅調な成長を5年10年と続けられるようなビジネスポートフォリオをつくって上場に至ろうと決意していた。購買やHRの事業を近年立ち上げ、特に購買で展開する「クラシルリワード」は、2027年にはメディア売り上げを超えるような勢いで伸びている。販促市場は15兆円という広大なマーケットがあるが、ほとんどがデジタル化されておらず、インターネット企業の多くはまだアクセスできていない。ここを当社は「クラシル」と「クラシルリワード」で開拓し、パートナーであるリテール企業やメーカーの売り上げ・利益の改善、またはユーザーのお得な買い物に貢献している。
強固なユーザー基盤と圧倒的認知度……MAU(月間アクティブユーザー)は4100万人(うちアプリ745万人)。国内の認知度は58.1%と非常に高く、メインユーザーである女性で見ると76.4%の方がクラシルを認知している。また、ブランドやリテールのお客さまに関しても、食品・飲料のナショナルブランドとの提携率は90%、小売の提携店舗数も約3万店舗となっている。この4,000万人以上のユーザーと小売企業、ブランドの3つをマッチングすることによってビジネスが成り立っている。
お得な買い物体験を提供……「クラシルリワード」では、チラシや棚に表示されている金額より20%程度安く買い物ができる。運営2年目ながらユーザー数は堅調に伸び、今後もMAU・ARPUの高い成長を見込む。「クラシル」のアセットを利用して食品、飲料品、日用品のメーカーのクライアントを中心に市場を開拓してきたが、近年は化粧品やオンライン商品のメーカーなど提携パートナーを増やしている。対象の小売企業もスーパーマーケットやドラッグストアだけではなく、コンビニや家電量販店、ガソリンスタンドなど拡大余地があると考えている。営業は社数・ブランド・業種の3つを軸にさらに開拓を進める。
ノンデスクワーカー向け人材紹介……「クラシルジョブ」は全体の売上高からするとまだ小さい領域だが、私自身非常に注力しており、5年10年後にわれわれの大きな武器になると考えている。「クラシル」や「クラシルリワード」のユーザー4,000万人の中には新しい仕事を探している人がたくさんいる。そこに対してポイントなどを付与していくことで、ユーザーの職業や年収などの情報を集めることができる。その情報を見た小売企業やメーカーのお客様から直接ユーザーにスカウトを打ってもらうことで、このマッチングが成立する。転職したい人だけではなく、クラシルにいる多くの方がターゲットとなり、企業側にとっては転職潜在層に対する新しい転職機会の提供、他社サービスではオファーできない方々にもアプローチができるというメリットがある。
大量の求職者を獲得できる強み……まずこの事業自体、モメンタムは非常に強い。人材紹介会社はたくさんあるが、(HR会社で)特に求職者側を集められる企業は非常に強い。われわれは4,000万人のデータベースとクラシルリワードを持っており、これらによって年内中にも数十万人のサービスの獲得の見込みが立っている。もうユーザーはいる状態なので、今は限定的に企業に提案している状態だが、今後それらを一気にオープンにした段階でスカウト量が一気に増えると、さらにマッチングが増えていく。中長期のマクロ環境およびビジネスの立ち位置を考えると非常に面白いポジションにいる。
LIVEwithについて……なぜ買ったのかとよく聞かれる。現状だとこのサービスは特にショッピングなどに寄与しているわけではないのだが、いま中国や東南アジアではインフルエンサーがライブ配信でモノを売るライブショッピングがTikTokを中心にはやっている。日本にそれらのフェーズが来る前に、先にライブショップをできるインフルエンサーを集めておけば、時が来たタイミングでしっかりと販促・ショッピングの領域に寄与できるサービスになる。やはり今後を考えると、海外で売り上げをあげられる会社にならないと強くなっていけないというのは感じており、そのポテンシャルがある事業の1つがこのエンタメのジャンルだと考えている。(SS)