ELEMENTS(5246)が2022年12月27日、東証グロースに新規上場した。同社はオンライン本人確認サービスを主力に、個人認証ソリューションや個人最適化ソリューションを展開している。初値は公開価格を95%上回る312円。上場当日の記者会見で久田康弘代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
目指す世界……「自分だけの要素を知ることで、より自分らしい生き方を選択できる世界に」という企業理念を掲げ、これまで様々な機械学習を使って人間のデータの解析をしてきた。その中でも個人認証による本人認証というところで、現在国内のシェアナンバーワンを獲得している。当社が定義する「IoP」とはIoTの人間版のことで、人間の生体情報や行動の特徴など様々なデータを自分自身が認証のキーとなって、それを自由自在に使いこなす世界を目指している。ビジネスモデルは「個人認証ソリューション」と「個人最適化ソリューション」の大きく2つ。個人認証は指紋や顔認証といった生体認証を組み合わせた認証ソリューション、個人最適化は体型や行動の特徴などを分析し、企業はこの分析データを使って、消費者に個人最適化されたサービスを提供する。
自社でデータを取得・保管……AIを提供する一般的なSIer(システムインテグレーター)の場合、データ自体は事業者側が保有しているというケースが多いが、当社は自社でデータを取得・保管しているところが強み。大量のデータを日々取得していることで、機械学習システムが絶えず進化し、高いサービス品質を維持できる。また、一般的なSIerは受託開発のような形でカスタマイズをしていくと思うが、われわれは基本的にカスタマイズをせず、汎用的なサービスとして提供している。さらにNTTドコモやKDDI、ゆうちょ銀行など日本を代表する大企業に使っていただける高レベルのセキュリティ要件を満たすサービス品質を持っている。企業にとっては、1社1社で認証基盤を作るよりも、われわれにお預けいただいた方がコスト面でもセキュリティ面でもメリットがある。
自動・無人で本人認証……「eKYC」(オンライン本人確認)という個人認証のソリューションがあり、これは口座開設時の認証などに使われている。これまでの本人確認は店舗や郵送による申請を行った後にさらに確認が必要だったり、配達では対人対面で確認しているということが一般的だったが、これに対して当社はPCやスマートフォンで完結するソリューションとなっている。例えば運転免許証やマイナンバーカードなど公的認証書類をOCR(光学的文字認識)で自動照合し、そこに自動認証・生体認証を組み合わせることで、自動かつ無人で認証が完了する。そのため即時開設や24時間の開設といったものが可能となり、ユーザーからも支持されて事業が伸びている。
成長戦略……eKYC市場シェアで3年連続のナンバーワン。顧客実績としても大手企業中心に140社へ提供している。個人認証ソリューションは新たに出来上がってきたマーケットだが、われわれの成長を示す認証回数は、足元この2年間で累計1,700万回超と大きく進捗。個人認証ソリューションの広がりがうかがわれる。今後の成長戦略として、引き続き個人認証ソリューションの市場シェアを広げていくとともに、これまでの大手企業中心から様々な企業へと事業領域の裾野を広げていく。また、個人最適化の売上高については現在3割程度となるが、今後は認証後、その人がどういう特徴を持っているのか、そういったことを分析する基盤を提供し、さらに事業の裾野を広げていく。さらに、個人情報の管理というところが大きなポイントになっているので、個人情報自体を管理・運営することも進め、来期以降、事業の成長の柱としていければと考えている。(SS)