GVA TECH(298A)が12月26日、グロースに上場した。リーガルテックサービスを開発・提供している。初値は公開価格を1.4%上回る700円。上場当日の記者会見で山本俊代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
業界初上場……AIリーガルテック企業として初の上場となる。日本は法治国家であり、ありとあらゆる活動に法が関わる。そのありとあらゆる部分について「法律×IT技術」で効率化を図っている。法務に特化したAI技術も完全に自社で開発している。
事業内容……事業は主に2つ。一つはリーガルテックSaaS事業。法務部門のある企業に対し、法務OS「OLGA(オルガ)」を提供している。OLGAはオープンリーガルの略称。全社に法律業務を開かれたものにしていくということでネーミングした。主にサブスクリプション型で月額課金モデルのため、基本的に積み上がっていく収益モデル。もう一つは登記事業。法務部門のないような企業に提供している。登記は法人の住民票のようなもので、本店の住所移転や役員変更などをサポートしている。本店移転や役員変更を行うタイミングで収益を確保する形。
創業の経緯……僕は2010年に弁護士登録し、都内の中堅事務所に勤めて2年で独立した。勤めていたときは大企業の法務支援を行い、独立後は主にスタートアップを支援した。(この経験から)いろいろな法務手続きを解決したいと思い、AIテクノロジーを活用すれば企業の成長を支えるようなソリューションをつくれるのではないかと考えて創業に至った。スタートアップ支援を通じ、弁護士が関わる契約書以外の手続きにも苦労されていることが分かった。手続き関係も含め全体をカバーしている会社はなく、この独自のポジショニングで成長をさせていけるのは大きな強み。
黒字化のタイミング……売り上げは基本的に両事業、半々程度で成長してきた。今後も同様の成長率(19年~23年の年平均成長率26.5%)を目指していきたい。赤字ではあるものの、営業損益率は改善してきている。黒字化のタイミングについて明言は難しいが、このまま赤字を継続させていくつもりはなく、来期以降からしっかり収益化に向けて取り組んでまいりたい。
導入事例……例えばミサワホームでは、従来は全国から様々な法律相談をメール、電話、チームスなどで受けていた。それを「オルガ」のデータベースで全部受け付け、生成AIが自動でデータベースを作り、事業部に公開して法務部に相談しなくても事業部で解決できるようにした。これにより相談件数が年2,700件から900件に減少した。一般的に法務に依頼して返ってくるまで2、3日かかるケースが多い。その往復回数を減らすことで営業のリードタイムが大きく短縮する。これにより売り上げ計上が早まり、営業が新しいことをできるようになるのが一番の導入効果。
成長戦略①……リーガルテックSaaS事業の「オルガ」はモジュールが4つある。4つのモジュールを全て利用する企業も出てきているが、いずれかのモジュールを使っている企業は多い。まずは複数のモジュールを利用する企業を増やし、単価の向上を図る。また、法務部だけでなく、事業部まで利用先を広げることで単価を引き上げていく。そのための目玉になるような連携が今年11月から始まった。それはセールスフォースとの連携。セールスフォース上で営業情報と法務情報の一元化を実現し、セールスフォース上で法務案件の依頼や契約書の確認などが行える。
成長戦略②……登記は百数十万件ぐらい発生し、本人が行うか、司法書士に依頼するかの二択。こうした中、当社のオンラインでの登記支援サービスが第三の選択肢になるようにしていきたい。現状は登記全体の件数に対し当社シェアは2%ほどにとどまるが、SEO対策を続けることで(ゆくゆくは)3割程度に高められるとみている。今後は登記以外の領域にも早期に進出したい。弁理士に頼むような知財関係、行政書士に頼むような許認可、社労士に頼むような労務など、こうした法務手続きを複数立ち上げてお客さまの課題解決と当社の収益化につなげることも成長戦略。
成長投資……上場後の成長投資は基本的には人員増強と広告関係。ユーザーの評判はかなり良くなってきているのでより認知をとるための施策も今後は行いたい。人員は営業とカスタマーサクセス領域。解約率は1%未満とかなり低い一方、お客さまが来期もかなり増える見通しのため、サポートのメンバーを増やしたい。
解約率が低い理由……プロダクトの改善スピードはかなり早い。弁護士や元法務部門の人間も含めてプロダクトのアイデアを出し、お客さまからも意見を聞き、機能改善を図っている。もう一つはカスターサクセス。既存のお客さまをサポートするメンバーに弁護士や法務部門のメンバーが一部アサインしている。共通言語で課題を引き出し、ちゃんと使える形でサポートできていることが大きい。
株主還元方針……未来永劫(えいごう)、還元しないというわけではないが、規模を大きくしつつ収益化を実現するのが先決と考えている。配当は順次収益化が実現してきたタイミングで検討を進めたい。(Q)