Japan Eyewear Holdings(JEH、5889)が11月16日、スタンダードに新規上場した。福井県鯖江市に本社を置き、眼鏡の製造、販売を手掛ける。初値は公開価格を6.5%下回る1,271円。上場当日の記者会見で、金子真也代表取締役社長=写真=と柴田俊一取締役が語った内容のポイントは次の通り。
金子眼鏡とフォーナインズの2ブランド……(柴田取締役)当社は純粋持株会社で、その下で計6社の子会社がある。金子眼鏡は創業1958年、売り上げは67億円。直営店は80店で、うちフランス2店舗、中国1店舗。売り上げの9割が直営店。フォーナインズはブランドができあがったのが95年。売上高は41億円。売り上げは直営店と卸が半分ずつ。直営店の数も少なく13店舗、うちシンガポールに1店舗。ともに中価格帯以上、高価格帯の眼鏡を主戦場としている。金子眼鏡は販売しているフレームのほぼ全量、自社で製造している。商品の企画・デザインから原材料仕入れて自社の工場で作り、自社の店舗まで販売する一気通貫のモデルが強み。フレームは現在3工場で年間9万本製造している。現在、第4工場を建設中で、IPOによる調達資金を建設資金に充填したい。もう一つの強みがブランドイメージを意識した店舗展開。金子社長自ら店舗デザインにも携わっている。
異なる属性の顧客を獲得……(金子社長)両社とも高価格帯で食い合いがないのかと質問されるが、全く異なった属性の顧客を獲得できている。両ブランドのコンセプトの違い、デザイン展開の違いに起因していると思う。フォーナインズはややフォーマルでビジネスに強いアイウェア、金子眼鏡はカジュアルかつトレンド、ファッションを押さえており、共存は可能と考えている。
海外展開やシナジーで成長……(柴田取締役)今後の成長戦略は、まず海外における店舗展開は今後中国を中心に直営店、もしくは現地、日本企業とのパートナシップで展開していく。2つ目は金子眼鏡とフォーナインズのシナジーの追求。フォーナインズが当社グループに入った21年以降様々な取り組みをしているが、それを強化する。具体的には金子眼鏡の出店ノウハウをフォーナインズで展開することや、金子眼鏡の工場でフォーナインズの商品を作ることを考えていきたい。国内における新規出店はフォーナインズは店舗数は微減しているが、金子眼鏡のノウハウを生かして出店を積極化したい。合計で年間1ケタ台後半ぐらい新規出店していきたい。昨今いろんな値段が上がっているが、当社がブランドを表現する一つの手段が価格だと思っているので、積極的に見直しながら売上高、利益の成長を考えていきたい。また、インバウンドはコロナ禍ではほぼゼロだったのが、急回復している。今後もインバウンド需要をしっかりつかむのが大きなポイント。
社長の生まれた年に創業……(金子社長)創業から65年たち、私の年齢も同じ。私も50歳代後半になり、順調に業績が上昇しているなか、私も65、70になってこの会社がどういう成長ストーリーを描けるか考えだし、IPOを実現してこれまでのプライベートカンパニーからパブリックカンパニーに進化させることで永続的な成長を続けさせるのが、私の最後の仕事と思った。
鯖江に本社がある強み……日本の眼鏡生産の95%以上を鯖江で作っているので、本社があるのは調達を含めて有利。東京、大阪のような消費地よりはるかに生産現場に近く、質のコントロールを含めて開発現場は恵まれている。一方、IPOなどの人材が不足し地方で上場を目指すのが困難なので19年にファンドと資本提携した。4年かかったが、地方のデメリットは完全に解消された。鯖江においてはとても大きいインパクト。これまで以上に産地における求心力をもって業界全体に良い影響を与えていければいい。フォーナインズはこれまで鯖江のメーカーがしっかり担っている。それを無くして全て内製化しようとは考えておらず、今後グローバル展開を強化する中、2倍、3倍の販売数量を目指したいが増量にそなえた投資が第4工場で、決して外部との関係を遮断するわけではない。
東証IPO改革第1号……(柴田取締役)上場日を柔軟に設定できるようになり、最大のリスクを考慮してレンジをもたせた。昨今のIPOマーケットが不安定な状況を考えると、万が一需要が十分に集まらないことを想定して、若干の幅をもたせた。結果的には想定以上の需要が集まったこともあり、幅のなかでは最短の本日に上場した。(HS)