jig.jp(5244)が2022年12月22日、東証グロースに新規上場した。同社はライブ配信事業「ふわっち」が主力。初値は公開価格を40%上回る476円。上場当日の記者会見で占部哲之代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
課金メインのライブ配信プラットフォーム……「ふわっち」を利用するユーザーの中心世代は30歳代~40歳代であり、全世代の半数以上を占めている。これはサービス立ち上げ当初、既に他社でライブ配信サービスはあったものの、それらは視聴メインだった。そこで当社は課金メインのプラットフォームを構築し、既存サービスのユーザーを誘導、新規コミュニティーを構築下という経緯がある。その基本サービスのユーザーが可処分所得の高い30歳代~40歳代であったため、アイテム課金との相性が非常に良いのではないかと考え、積極的に進めたところ、その後も同世代が集まり、現在のメインユーザーとなっている。
広告投資は一巡……業績は順調な増収基調。営業損益は前2022年3月期で約3億円の赤字だったが、成長取り込みを目的とした広告宣伝費の積極的な投資が原因であり、前期の下期以降は黒字基調でしっかりと推移している。この広告宣伝費については、効率性を重視した事業運営に既にシフトしており、今後は収益体質の安定化を目指す方針。ふわっちの売り上げは課金ユニークユーザー数とARPPU(有料会員一人当たり月間平均売上高)によって構成されている。課金ユニークユーザー数はこれまでも堅調に推移し、収益の分散化が進んでいる。また、ARPPUは安定的な水準で推移している。売り上げ拡大に向けた施策として、アイテム機能・仕組みのさらなる拡充や魅力的なイベントの普及、規律のある広告販売への投資などを実行している状況だ。
有力配信者形成へ……もう一つのKPI(重要業績評価指標)である配信ユニークユーザー数もサービス開始以来、一貫して増加基調にあり、前期末の時点で2万4,000人を超え、2年間で約2倍に増えている。また、月間5万ポイント以上を獲得する有力な配信ユニークユーザー数も22年3月末で1,650人、こちらは2年間で約2.5倍に増えており、有力配信者層の形成が順調に続いている。有力配信者の増加が視聴者の増加につながり、そして事業の成長につながることから、有力配信者の育成のためのふわっち内だけのイベントに加え、メディアとのタイアップなど対外的なイベントを含む魅力的なイベントを催している。また、高い還元率も配信者にとっては大きな魅力となっている。
ふわっちの強み……1点目は、アマチュア配信者がメインである点。誰でも配信がしやすく、配信者数の増加と多様な配信コンテンツの充実につながっている。2点目はコンパクトなコミュニティーである点。配信者と視聴者のコミュニティーがコンパクトであるため、互いの顔が見える熱量を持ったコミュニケーションが発生し、結果として多くの課金につながっている。最後に30歳代~40歳代がメインユーザー層である点。可処分所得の高さがARPPUの持続的な成長を実現している。
今後のビジネス展開……高い開発力をベースとした、既存事業のユニークユーザーの増加とARPPUの維持向上が基本戦略。その先の収益の多様化を目的とした隣接新規市場への事業展開では、3つの事業を検討している。短期的には自社での開発を軸に、新規課金ユーザーの獲得を狙ったバーチャル配信、バーチャル配信とデジタルコンテンツ販売については、来期あたりからテストの検討および既に実際テストをしている部分があり、具体性が見えてきている。利益率向上を狙ったデジタルコンテンツ販売に注力していく。また、提携先とはこれから協業を開始し、バーチャル配信機能の拡張やライブコマース事業などの新規事業を開始していく。ライブコマースについては2~3年後ぐらいにしっかり形になっていくイメージ。将来的にはアイテム収益への依存を減らし、収益の多様化を実現していく。
ハイレベル人材を確保……東京都、福井県鯖江市の2拠点体制をとっており、東京は主に本社機能、福井は主に開発部門が入っている。当社が最重要視するサービス開発力を支えるために、毎年一定数の高専生を採用するなど、優秀なエンジニアリソースを獲得するとともに、エンジニアにとって最適な環境を整えるために、福井県鯖江市に新開発センターを今年の7月に立ち上げた。これらは当社の強みであるスピーディーなサービス開発力の重要な基盤といえる。なお、創業者の福野泰介(会長)は技術面に非常に強い元プログラマー。出身校である福井高専とのコネクションに始まり、今では全国の高専生にフォーカスした人材採用で戦力を強化する体制ができている。福井には拠点があるだけでなく、公共の団体のデータを一般に開放するオープンデータプラットフォームのところの支援や、「IchigoJam」という子ども向けのパソコンなどのCSR活動を展開するなど、地元自治体との密なコミュニケーションもある。デジタル庁による諸々の推進を背景に、将来的にはCSR活動の域を脱し、主要事業として検討していくこともあり得る。(SS)