Laboro.AI(5586・G)が7月31日、東証グロースに新規上場した。同社は顧客企業の戦略や課題に合わせたオーダーメイドのAI開発と、AI導入・コンサルティングを行う「カスタムAI」を展開。初値は公開価格比2倍の1,195円だった。上場当日の記者会見で椎橋徹夫代表取締役CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
着実な売り上げ成長を実現……AIの技術をビジネスにどう使うか、そして社会をどう変えていくかが重要と考えており、当社はテクノロジーとビジネスをつないでいくことを大切にしている。創業以来、基本的には利益を出しながら売り上げ成長を重ねてきた。今2023年9月期は前期から一段大きな成長をしていて、通期で売上高13.5億円程度、営業利益で1.7億円程度を想定している。1つの特徴が株主構成で、ベンチャーキャピタル(VC)からの調達はせずに上場まで来た。一方で、長期的深い関係性を作っていくという観点から主要の顧客企業に資本参加いただいている。
オーダーメイドAI開発……「カスタムAI」とは、顧客企業の固有のビジネス課題や成長戦略に合わせてオーダーメイドでAIの開発を行う。また、そのAIのソリューションを使って顧客のビジネスをどう変えていくか、事業変革のコンサルティングを併せて行っている。カスタムAIは1つ1つ個別性が高い取り組みになるが、当社はバリュー・マイニング(VM)とバリュー・ディストリビューション(VD)という2つの提供形態を連動させることでスケーラビリティ(早い成長)を追求している。VMはこれまで先例がないようなAI、こういったものにプロジェクトチームが試行錯誤しながら1からソリューションを作っていく。一方で、こうした先例のない取り組みを進めていくと、その中で技術やノウハウが蓄積されていくので、これらを応用する形で成果を生み出すことを目指していくのがVDとなる。
狙うはバリューアップ型AIテーマのマーケットリーダー……カスタムAIは国内AIビジネス市場のうちのAI構築サービス市場に該当する。この市場は数年で1兆円に迫る規模感だが、特に当社が高い競争力を構築してマーケットリーダーのポジションを狙っていきたいと考えるのが、バリューアップ型のAIテーマ市場というところ。企業のIT予算のうち、いわゆる業務改善・効率化にあたるようなもの(ランザビジネス予算)に対して、企業の本質的な成長、ビジネスの新しい施策展開(バリューアップ予算)の部分を狙っている。日本は業務改善に比べてバリューアップ予算が非常に限定的。その結果、米国に比べてバリューアップに相当するDX(デジタルトランスフォーメーション)による成果が顕著に出遅れており、潜在的な成長可能性が大きい。
競争力の源泉……1つは何よりも専門性の高い優秀な人材が集まっている点。カスタムAIというサービスを進めていくに当たって、いわゆるAIコンサルタントのような役割、AIの技術もかなり深く理解していてビジネスへの活かし方も分かる独自の専門人材「ソリューションデザイナ」がそろっているのがユニークなところ。2つ目がVMとVDの連動によって拡大再生産の仕組みを作っている。3つ目が顧客基盤。顧客企業の長期の企業成長を左右するような重要なテーマに取り組むといったパートナーシップを築いている。
今後の展望……重要視しているKPIは、大きくは「売り上げの成長」と「利益」。売り上げ成長については、年間の売り上げ成長というところは当然ながら、継続の顧客からの売上成長率、年間での新規の顧客獲得という部分を見ている。利益については特に付加価値の増量を図っていくという観点で、売上総利益率(粗利率)を重視している。なお、今期は継続顧客からの売上成長率が大体4割、新規の獲得数は昨年を上回るような水準。優秀な人材を集めるため業界の中でも高い給与水準だが、粗利率は60~70%台を維持している。(SS)