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IPO2024年7月30日

IPO社長会見 Liberaware ドローンでインフラ点検、災害対策

Liberaware(218A・G)が7月29日、東証グロースに新規上場した。初値は公開価格を46.4%上回る454円。同社は狭小空間に特化した点検作業用ドローンと、その撮影画像・映像のデータ処理・解析サービスなどを提供。上場当日の記者会見で閔弘圭代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

自社内で製造を完結……弊社のドローン「IBIS(アイビス)」は、まず小型であることが特徴。われわれはこの小型サイズを実現するためにハード・ソフトの製造をすべて自社内で完結していて、一からすべて自社で完結しているのは上場会社でも当社が初。ほかにもニデックと開発した防塵モーターや、狭いところでも安定して飛べるような性能を持っている。いろんな会社が屋外の中型サイズのドローンを手掛けている中、われわれは屋内で小さいサイズをずっとやってきた。こうした技術に関するノウハウ・知財をたくさん蓄積しており、これからこの産業に対して入ってくるメーカーがいたとしてもしっかり防衛策を持っている。

実績豊富……主に駅の天井の中の調査などで活用されており、例えば水漏れがどこで起きているか、これまでは全部天井をはがして確認作業を行っていたが、点検箇所にドローンを入れるだけで場所を特定することができる。地下鉄内にある立坑も、終電後に足場を組み限られた時間で点検しなければならなかったところを、ドローンを飛ばしてすぐさま察知することができる。また、今年も福島第一原発での利用を大きく取り上げてもらった。私自身はエンジニア出身で、もともとドローン関連を始めたのも福島第一原発の調査。そこからアイビスが生まれ、実際にこうした現場で活用していただくことができた。今年発生した能登半島の震災においても、ドローンによる倒壊した家屋や商業設備の調査とそのデータ解析などを行った。日本各地で設備の老朽化が進む中、国もドローン関連の支援に乗り出している。労働人口の減少や点検業務のアナログ規制の見直しなどにより、現場ではロボットなど新しい技術が求められている。

ハードとソフト両方の技術……ハードを用いた事業は、弊社のパイロットが現地に行って点検する点検ソリューション、そして販売・レンタルでドローンを提供するプロダクト提供サービス。そしてデジタルツイン事業として、ドローンのデータ解析を行う「LAPIS(ラピス)」と、JR東日本との合弁会社であるCalTaと連携して作ったデジタルツインプラットフォーム「TRANCITY(トランシティ)」がある。ラピスは動画をアップロードすると、それが点群データ、三次元画像、オルソ画像という3種類の定量的なデータに生成され、差分検知や異常検知、AI解析など様々な解析と連携し、どこに異常があるかを把握する。劣悪環境でノイズが多い画像でも三次元化できる点が強み。技術ベースとして日本製鉄と共同特許を出しており、こうした大手企業との連携も非常に多くなってきている。

処理難度の高い環境も三次元化……ラピスは日本製鉄の炉壁向けの導入実績のほか、最近では建築物のBIM化(図面化)でも注目を集めている。BIMは図面がない、もしくは図面が正しくない、測量作業の負荷が大きいといった課題があったが、当社の場合は図面がなくてもアイビスが撮影したデータを三次元化し、そこからBIM化することができる。直近では東京都の委託業務で小学校全体のBIM化なども手掛けており、こうした事例が増えてきている。トランシティはアイビス以外の様々な撮影デバイスと連携し、データを自動的に三次元化し地図面にプロットするといったもの。グーグルの3Dビュアーのデータを取り込むこともできる。

既存サービス適用範囲の拡充……成長戦略は「コアプロダクトの進化」「成長エンジンの獲得」「海外展開」の3つ。コアプロダクトの既存サービスの拡販について、これまではプラントを中心にやってきたが、現在は自治体と連携して様々な事例を増やしている。自治体が所有するごみ焼却炉などに応用が可能で、実際に東京都下水局との連携で汚泥焼却炉や下水関連の点検なども増えてきている。災害対応も強化中。直近でもSBIRという国家プロジェクトで、倒壊した家屋の中で生存者を探索に使うための技術開発に取り組んでいる。また、今後一番メインとなるのが鉄道SBIRというもの。こちらも国家プロジェクトだが、JR東日本を中心とした鉄道事業者らとともに線路や架線の点検をすべて自動化できるようなプロダクトをスタートした。4年間のプロジェクトで、そこに対する補助金が52億円と、ドローン関連では空飛ぶクルマを除いて非常に大きな金額を頂いている。

黒字化への道のり……売上高は5カ年平均で約70%と成長してきて、今期だけ見ても114%。本当に黒字化できるのか皆さん気になっているポイントだと思うが、足元では粗利の部分が大きく変わってきた。粗利率の高い機体販売を今期から始めており、これがかなり積み上がってきたためだ。販管費は昨年に比べてやや増加しているものの、そこまで営業人材を抱えなくてもクライアントとの関係を深めることでしっかり成長できる。研究開発費も今回52億円という額を頂くので、自社内での負担はそれほど大きくない。短期では機体販売を積み上げ、さらに中長期でしっかりリカーリングの部分を伸ばすことで、経常利益ベースでの黒字化を目指していく。(SS)

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