monoAI technology(5240)が12月20日、グロースに新規上場した。メタバースプラットフォーム「XR CLOUD」を提供する。初値は公開価格の1.9倍の1,280円。上場当日の記者会見で、本城嘉太郎代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
デジタル甲子園開催……先端技術でエンタメと社会の未来を創造するというビジョンのもと、ゲーム開発で培った通信技術やAI技術をコアとして、メタバースプラットホーム「XR CLOUD」を展開している。一つの仮想空間の中で共同オフィス、展示会、カンファレンスミーティングなどを開催できる。例えば甲子園球場をバーチャル化して、その中で展示会や音楽ライブなど多彩なイベントを行う「デジタル甲子園」というイベントを、阪急阪神HD(9042・P)と一緒に開催した。大企業が自分たちのブースを出展したり、バーチャルライブを何百人と一緒に楽しめた。
デバイスの普及も課題……サービス自体がまだまだ新しくて、実際にメタバースイベントに参加された方は少ないので、どんどんいろいろなものをメタバース上で開催して、いろいろな方が参加できる市場をつくっていかなければと考えている。参加者の視点からは将来的には没入してしまうXRデバイスの方が、臨場感やできることも大幅に増える。そういったデバイスの普及も現時点では課題と考えている。
3サービスを実施……ビジネスモデルとしては3つのサービスを展開している。まずメタバースサービス。「XR CLOUD」をOEM(相手先ブランドによる生産)供給して、顧客企業が独自のメタバースを安価に高速に作れる。2つ目がXRイベントサービス。(自分たちで)作るまでではないが、社内懇親会や製品説明会をメタバースでやりたい顧客に、当社のバーチャルイベントプラットフォームを提供する。3つ目がXR周辺サービス。AI開発や通信ミドルウェアの提供、開発をしている。
目的特化型で希望のものを……今、メタバースでできることは非常に多く、1つのプラットフォームであらゆるニーズを満たすことはなかなか難しい。例えばライブのメタバースでは投げ銭機能がほしいが、学校のメタバースでは生徒の画面を教師が見られる機能が欲しいなど、全然違う機能が必要になる。当社は目的に特化したメタバースがどんどん増えていくと思っている。その目的特化メタバースを作るときに、毎回ゼロから作ると基礎部分だけで数億円の開発費がかかるが、当社のプラットフォームを利用すれば追加部分の開発だけでよい。圧倒的にコストが安く、速度も早く、希望のメタバースを作れる。
1,000人同時接続可能……イベントサービスは1件1件受注したのを作って提供する。一つ一つパッケージ化しており、会社説明会をしたい、社内懇親会がしたいなどという時にパッケージから出して短期間、低コストで提供できる。周辺サービスでは、もともとゲーム業界向けに高性能な通信エンジンを作っており、メタバース開発の核となる「モノビットエンジン」として提供している。これを生かして当社の「XR CLOUD」は1エリア1,000人同時接続ができ、スマホゲームから先端XR機器まで幅広いデバイスに対応している。
黒字浮上で業績拡大……過去2年は大きな投資を行ったため赤字だったが、2022年12月期予想から黒字転換してそのタイミングで上場した。今後も黒字は広げていきたいし、トップライン自体もどんどん高めていきたい。研究開発に投資しながら黒字を確保していく。イベント実施数は21年度の13件が22年は59件、累計動員数も21年の6万人が22年は20万人と非常に大きく成長している。
海外版もリリース……今後の成長戦略として、特定業界に特化した専用メタバースの開発を考えている。つい最近は医療業界特化型メタバースを作った。今後、エンタメ、物流など広げていきたい。あとは既存のメタバースサービスによっていろいろなメタバースを増やしていく。また、メタバース相談室というオウンドメディアもやっており、ウェブのマーケティング中心に行っていきたい。24年からは海外版もリリースする。将来的には全世界に出したい。
地方都市本社の強み……東京ではなく、地方都市(神戸市)に本社があるため、行政のバックアップ、支援をいただいている。医療系のカンファレンスだったりとか、そういう先端研究開発も神戸は積極的にやっており、今後連携できたらうれしい。コロナ禍で東京の人材で地方に帰った人が結構いる。弊社は完全リモートワークで出社が必要ないので、採用的にプラスになった。メタバースをしていることもあり、場所にとらわれない働き方は今後も追求し、地方の人材を活用していきたい。(HS)