Sapeet(269A)が10月29日、東証グロースに新規上場した。PKSHA Technology(3993・P)子会社で、生成AIやAI身体分析技術を生かした接客・営業DX(デジタルトランスフォーメーション)のサービスをヘルスケア、小売業界などに提供。初値は公開価格を52.3%上回る2,285円だった。翌30日はストップ高(500円高の3,010円)。上場当日の記者会見で築山英治代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
専門家の技をAIで再現……従来のAIがバックオフィスを中心としたノンコア業務を代替することによって業務効率化を図ってきたものに対して、われわれが行うExpert AIは各領域の専門家のナレッジ・ノウハウを活用しながら、AIでそれを一部再現することによって彼らのコア業務の価値をさらに増幅・拡張するもの。このExpert AIの提供を通じて「デスクレスワーカーのエンパワーメント」と「ウェルネスデータの分析・可視化による健康寿命の延伸」という大きなテーマに取り組んでいる。
まずはR&D(研究開発)でわれわれの強みであるAIの技術と各領域の専門家のナレッジ・ノウハウを掛け合わせることによって、コミュニケーションアルゴリズムと身体分析アルゴリズムを研究開発し、それらを「AIソリューション」、「AIプロダクト」として提供している。身体の分析をする中で、前後のコミュニケーションの部分が顧客のサービス体験価値を向上させるということに行きつき、祖業のウェルネス領域からコミュニケーション領域へと提供先を広げてきた。
両輪展開による相乗効果……AIソリューションでは、身体分析アルゴリズムとコミュニケーションアルゴリズムを個社カスタマイズして、顧客の課題整理や提案、開発、その後の保守・運用など一気通貫して提供している。AIプロダクトは「カルティクラウド」というシリーズ名で提供。SaaSのような月額利用料が中心で、プロダクト全体の約8割が姿勢・可動域・歩行分析の「シセイカルテ」の売上高だ。
AIソリューションとAIプロダクトの両輪によって広いターゲットと安定的なアセット蓄積が行える。裏側ではコンサルタントやエンジニア、専門家などが共通基盤となっているため、リソースのタイムリーな適材配置、また、技術・ノウハウの一元管理が可能。効率的なサービス提供体制が構築できている。
3つの柱で成長……成長戦略の1つ目は、AIソリューションで研究開発するアルゴリズム領域を拡大していくことで既存取引先のLTV(顧客生涯価値)を最大化すること。また、新規顧客、取引領域を継続的に拡大させていく。
2つ目はAIプロダクトにおける「カルティクラウド」シリーズのサービスの追加や拡販、さらに販売パートナーとの協業による海外展開。例えば台湾、インドネシア、ベトナム、米国などの代理店からの声掛けがあり、実際に契約が進んでいるところや、代理店にまず導入してもらっているケースもある。
3つ目はプロダクトやソリューションで培ったデータやAIの技術・アセットを活用し、われわれの顧客でも課題の大きい物販や集客、人材などのプラットフォームビジネスにチャレンジしていくこと。M&Aやアライアンスを通じて当社に足りない要素を獲得し、成長を加速させていきたいと考えている。
いよいよ黒字化へ……これまで40%を超える高い売上成長率を継続してきた。顧客の満足度を表すAIソリューションの継続率は90%と高い水準であり、AIプロダクトは解約率0.3%と低い水準で推移している。利益に関しては、足元は投資回収フェーズに移っており、前9月期通期は赤字幅が圧縮できている。今期についてはまだ開示していないが営業黒字化の見込みであり、実現に向けて着実に進捗している。(SS)