yutori(5892)が12月27日、グロースに新規上場した。EC(電子商取引)を中心にZ世代(10歳代前半~20歳代後半)向けのファッションブランドを複数展開しており、上場前はZOZO(3092・P)の傘下だった。初値は公開価格を12.2%上回る2,829円。上場当日の記者会見で片石貴展代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
オンライン、Z世代、SNSが特徴……アパレルを22ブランド運営している。事業内容としてはオンラインメインの販売チャネルが特徴で、(直営の)サイト「YZ Store」と「ZOZOTOWN」で8割、残りがオフライン(実店舗)。創業が2018年、最初は古着のECサイトで、20年のZOZOとの資本業務提携前後からオリジナルブランドの展開を始めた。一般的なアパレルはオフラインがメインだが、われわれはオンライン、Z世代、SNS(交流サイト)を活用した新しいアパレルの会社として認識していただければ。私は25日で30歳になったばかりで、アパレル業界で最年少上場になる。執行役員を含む4人のうち3人がゆとり世代(Z世代の上で30歳代前半まで)、Z世代という若い経営陣。
SNSのフォロワー数は337万人……ブランドによるポートフォリオ構築で、会社全体で安定した売り上げを狙っている。昨年は為替の影響で粗利率が若干悪化したが、サプライヤーの集約などで改善でき、業界平均より高粗利で付加価値の高いブランド運営ができている。過去のトレンドアイテムをリバイバルした「ティーンカルチャー」、ZOZOTOWNで展開している「トレンド」、外部のデザイナーと協業してブランドを作っている「デザイナーズ」、それから昨年買収したA.Z.Rを中心とした「インフルエンサー」と4つのグループを中心にアパレルブランドを運営している。SNSのフォロワー数は(TikTok、インスタグラムを中心に)337万3,000人、Z世代というターゲット層の中でかなりの規模感のコミュニティが確立できている。
NICOモデルで成長……当社の強みはファン・コミュニティを価値の源泉としていること。具体的には企画開発のNICOモデル、Z世代を中心としたSNSマーケティング、自律分散型のブランド運営、この3つを通じてヒットブランドを再現している。NICOモデルは「ニッチ、アイテム、コラボ、オフライン」の頭文字。特にニッチを重視しており、大人から見ると尖っていると思われても、若者の熱量のある領域を選定してブランドを伸ばす。実店舗は投資効率と成功確度を意識して、現在13店舗。NICOモデルに乗せてファンとの継続的な接点を目的としている。10月には(東京の)原宿に9,090ブランドの旗艦店を出し、海外の客も含めて手応えがある。今後も東名阪を中心に店舗を展開した上、各ブランドにふさわしい場所にフラッグシップ店を造り、海外展開の足掛かりにつなげていきたい。
10年後には業界トップ5に……5年後に日本で一番ブランドを持つ会社になりたい。1年で10ブランドずつ増えれば、5年で70ブランドになる。1ブランド数十億(円規模)のイメージで、大きいアパレル会社に比べたら規模は小さいが、ブランドが積み重なってyutori全体を大きくするイメージ。単にブランド数があるというより、多面的な熱量、熱狂を日本中から集めたい。10年後にはアパレル企業の中で時価総額トップ5に入っていたい。
当事者感覚を重要視……成長戦略は3つ。まずアパレル×Z世代で、われわれがこれまでしっかり伸ばしてきた部分。強みをさらに伸ばすイメージ。SNSを駆使したヒットブランドの創出とブランドの買収の2軸で拡大目指したい。次にアパレル×世代拡張。ブランドの立ち上げではリアリティー、当事者感覚を非常に重要視している。私が起業してから5年たち、(創業メンバーが)年齢を重ねるほど自分たちがリアリティーを持つマーケット、ブランド範囲が広がる。3番目は別商材×Z世代。Z世代への訴求力、マーケティング商品企画を生かし、アパレル以外にも今後取り組んでいきたい。
ZOZOに感謝……(ZOZOは筆頭株主でなくなるが)ものすごく感謝しており、自分の身なりもこういう(砕けた)感じで、自分たちは洋服が好きだから真摯に商売していてもどうしても、「遊びでやってるよね」との印象を持たれてしまった。しかし、ZOZOのバックアップでこれから伸びるとの期待感や、いろいろな人に知ってもらえた。ZOZOの経営陣も、ZOZOの信用を借りて大きくなることに強く応援していただいた。(HS)