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IPO2025年3月28日

IPO社長会見 ZenmuTech(ゼンムテック) セキュリティの新時代を切り開く

ZenmuTech(338A)が3月27日、東証グロースに新規上場した。初日は3,635円カイ気配のまま取引が終了、上場2日目の28日に公開価格(1,580円)比3.1倍の5,000円で初値を付けた。同社は独自の秘密分散技術によって、PC内のデータを無意味化・分散することで情報を守る新発想のサイバーセキュリティを展開。上場当日の記者会見で田口善一代表取締役社長CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

認知拡大、そして世界へ

日本で初めてのソフトウエアのテクノロジー会社の上場だと思っている。当社は2つのテクノロジーで3軸の事業をしているが、その事業は非常にユニークなもので、エポックメイキング(新たな時代を切り開く役割)なところがあり、それが株価にも反映されている。

超小規模上場ではあるが、資金調達目的の上場ではない。新しいテクノロジー故に、そのテクノロジーの実績と信用度を上げるため、そして将来性をアピールするための上場ということになる。秘密分散という技術はどちらかというと埋もれた技術だが、この有用性を自社の技術と製品でまずご評価いただく、そして認知された上でグローバルに進出するというのが上場の最大の目的だ。

画期的な技術「秘密分散」

第一軸が情報漏えい対策ソリューション。ここで売上高と利益の約8割を稼いでいる。第二軸は秘密分散の特許をIP(知的財産)化してキットとして販売している。要は素材・部品として各メーカーにOEM(相手先ブランドによる生産)提供しているもので、ソフトウエアではなくてハードウエアに組み込んでいただく。ここが今一番力を入れているところだ。

第三軸が秘密計算。データを秘匿化したまま計算し、必要な結果だけ得ることができるというものだが、これはまだなじみが浅い。チャットGPTが世に出た時の「これをどう使えばいいの?」というような状況があと1~2年続くとみられ、よって3~5年後のテクノロジーになるだろうと考えている。

秘密分散とは、簡単にいえば暗号化に代わるテクノロジーだ。情報を暗号化した上で分散管理する、つまりシュレッダーをかけて分散しているので欠片だけでは復元できない。いわば「守らないセキュリティ」となっている。また、一般的にセキュリティは堅牢になればなるほど利便性が悪くなるというトレードオフのものだったが、当社の技術陣の努力とアライアンスパートナーの皆さまの知恵を拝借して、分散管理をしていることを意識させない、従来とは真逆のセキュリティを実現した。

組み入れ広がる

第二軸の「エンジン」というソフトウエア開発キットについては、既に富士通のパソコンの中に入り始めているし、ほかにも日立製作所、ドローンや暗号通貨、監視カメラメーカーなどいろいろな所に入り始めた。ただ、これもまだセカンダリーであり、もっと高いソリューションはたくさんある。これが日本のメーカーだけでなく海外のメーカーにも広がれば大変な売り上げが一挙に上がることになる。

われわれの技術の特色として、分散してバラバラにする、これは言ってしまえば元のデータの塊より小さくすると言い換えができる。なので、IoTデバイスのように保存容器が小さいもの、さらに無線の通信回線にも適用でき、かつそれをセキュアに保管したり転送したりできるというところがわれわれの強みを発揮できるポイント。最終的にはコンシューマーレベル(BtoBtoC)に持っていけるテクノロジーであり、現在、グローバル企業を巻き込んで話をしているところ。

海外への布石も

第三軸のビジネスは、例えばここにいる皆さんでテストをしたとして、自分の成績を周りにオープンにすることなく平均値や偏差値が分かるという仕組み。応用範囲が非常に広く、これを産業に適用したら面白くなる。今は国のプロジェクトや先進的なメーカーとのやり取りを始めており、今年度中にいくつかアナウンスできることになる。

国内だけのごく限られた技術で終わってしまうのではと思われるかもしれないが、グローバルに広めるために海外の展示会にも率先して出ている。米国に出張ベースの拠点を設けるなど2、3年前から海外での活動を進めている。日本企業は舶来品に弱いということもあり、現地企業あるいは日系の海外法人と実績を作って逆輸入という形で展開していく。(SS)

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