IPO会見/全文書き起こし
【会社名】ジェノバ(5570・東証グロース)
【上場日】2023年4月18日
【スピーカー】
代表取締役社長 河野 芳道 氏
【資料】
①事業計画及び成長可能性に関する事項
②業績予想
衛星データの誤差を修正する「位置補正情報サービス」提供
当社はミッションに「高品質な位置情報の提供による安心・安全な社会づくりに貢献する」を掲げてございます。2002年1月の創業以来、測量業のお客様を主体として一貫して高精度位置情報配信サービスを行ってまいりました。
当社の位置補正情報サービスはGNSS機器に対して行われます。GNSS機器とは衛星測位を行うための機械で、衛星測位とは、衛星から発せられる電波を使用して自己位置を測定するもの。衛星からの電波を受け自己位置を求める際には最低4基の電波が必要になり、衛星には現在、アメリカのGPS、ロシアのGLONASS、ヨーロッパのガリレオ、日本の準天頂などがあり、それらを総称してGNSSと呼んでおります。
GNSS衛星から受信機に届く信号には、さまざまな誤差要因が含まれております。中でも特に影響が大きいものとして「電離層」と呼ばれる電子の層があり、その電離層を通る際に電波が遅延することになります。そのことなどでメートル単位の誤差が生じてしまいますが、当社では、この誤差を正したデータをお客様に提供することによって、メートル級の誤差からセンチメートルの誤差へと変えるデータをリアルタイムに提供しております。
既存領域「土木施工」もドローン台頭で「着手前」まで拡大
現在、当社は主にこちらの6つの分野にサービスを展開しております。測量分野については精度の高い位置情報が必要なことから、長年当社のデータが使用されております。このような中「測量」「航空測量」「土地家屋調査」については安定した顧客となっております。
「土木ICT施工」「ドローン」「IT農業」については現在市場が拡大している分野です。「土木ICT施工」においては、当社の補正データを使用することにより、土木施工の機械を管理できるようになりました。一例ですけれども、低圧ローラーの位置を管理することにより、低圧ローラーが通った軌跡や低圧の回数などをリアルタイムに管理でき、通った場所を現在ではヒートマップに表示することができるようになっていまして、作業漏れを回避できるということができるようになっています。このようなことにより品質の高い道路生成に役立っているところです。
「IT農業」でございますが、担い手不足の状況から自律走行ができる田植え機やトラクターなどの自動操舵機器というのが現在、使用が拡大しております。農業用ドローンにおいても自動的に農薬散布したり、あるいは肥料をまいたりですね、こういったところでも当社のデータが使用されておるところでございます。
「ドローン」でございますけれども、皆さん御存じの空撮という、写真を撮るだけではなくてですね、現在では工事測量などにも使用されている例が増えております。工事測量においては「起工測量」と呼ばれる工事前の現地調査で使用され、ドローンで撮ったデーターが3次元化されるということが現在、広がっており、このデータを後の施工の方に利用する、こういった連携も増えることにより、ドローンにおいての使用も現在、拡大しているところでございます。
コロナ禍でも業績は堅調推移、契約数伸長で今後も成長持続
ご紹介いたしました分野においては市場拡大とともに当社の契約数が増えることで順調に売上、利益ともに伸びてございます。ご覧いただいてますように最近までコロナということでございましたけれども、コロナ禍の中においてもその影響が少なく、売り上げを伸ばしてきたというのをご覧いただければと思います。
今後も当社では総契約数の伸びを継続することで売上を伸ばしていく計画です。このような状況から今期、2023年9月期の予算において現在、順調に推移しているところでございます。
強みと成長戦略「モビリティ対応はこれから」KDDIと連携
「最寄りの電子基準点成果に整合」とありますが、当社では、地図に合致した、整合したデータをお客さまに供給しております。「地図に合致した」というのは、どういうことなのかと申しますと、日本では大きな4つのプレートがありまして、これが日々動いております。特にプレートの動きというのは予測できず、いろんな方向に動くことになりますけれども、当社では、その動きを国が管理している電子基準点というものを使って察知できまして、当社の特許技術を使ってですね、その地図に合ったデータをお客お客様に提供しております。このことで、経年変化による座標のズレを補正して、精度の高いデータを供給をしているところでございます。
データ生成のための電子基準値の高密度化というのを当社では行っております。図に三角が示されていますが、この三角の形が小さくなればなるほど精度が安定するという研究結果を当社では得ておりまして、当社ではこの赤い三角を全国で形づけております。これには国土地理院が管理する1300点のデータ全てを使用しておりまして、これを使用することによって安定的なデータを供給することができるようになっています。
配信システムの冗長化と判定配信ということで、当社のデータを安定的に配信するためには、やはりサーバーが冗長化されていないといけません。いくら正しいデータが作れたとしても、配信が止まってしまえば何の意味もないこととなってしまいます。そこで当社では配信システムに係るサーバー等を二重化しております。さらに、それに関わるネットワークについても二重化することにより、システム的に冗長化された形をとっております。
さらなる安定化対策といたしまして6項目を現在、講じております。1つ目に「解析用電子基準点の高密度化」、2つ目に「解析ソフトウェアとテスト研究の継続」、3つ目に「太陽活動の監視」、4つ目に「電子基準点の環境調査」、5つ目に「配信データの品質チェック」、最後に「VMによるサーバーの冗長化」、VMというのはバーチャルマシンでございます。この6項目を講じることにより、当社は安定的なデータをお客様に提供してございます。
これまでご説明しました6分野に加えて、今後のターゲットとしてこの赤い点戦で囲っているところを当社としてはターゲットとして見据えております。特にこの中でもインフラにかかわる部分ですね、これはこれから需要も増えてきますし、当社といたしましては市場が拡大する分野として捉えております。
それ以外の分野においても、今回のIPOを機に新しいビジネスパートナーを形成し、事業拡大していく計画でございます。
――以上、簡単でございますが、ご紹介させていただきました。
Q1:かなり独自性の高い事業を手掛けているが、競合は?
現在、競合と言われるところは、当社と同じような配信サービスを行っているところが2社ほどございます。1社は日本GPSデータサービスという会社、もう1社は日本テラサットという会社となっております。この両社と当社の違いですけれども、言われているのは、当社の中で採用しているのは、先ほどご紹介しました「1300」という点を全部を使っていますけれども、2社は、その中の約半数の電子基準点を使用されてるというふうに言われています。
電子基準点には現在2つのメーカーが入っております。ひとつはトプコンという測量機メーカー、もう一つはトリンブルというメーカーになります。この2つが電子基準点を今、二分しているわけなんでございますけれども、当社の競合先はトリンブルさんの電子基準点を主に使っていらっしゃいます。これには理由がありまして、そこに使っている解析用のサーバー、システムがございまして、主にトリンブルさんの解析ソフトを使ってらっしゃいます。ですので、そのトリンブルさんの解析用のソフトを使用するには、トリンブルさんの機械が一番良いということになっておりまして、それを使って配信をされていらっしゃるというふうに聞いております。
ですので、さきほどご紹介いたしましたP26の三角の図、当社ではその1300点を使うことによって非常に小さい形、いわゆる距離が短い形なんですけども、そういう形を形成してお客さまにデータを提供することによって、安定化ですとか、信頼性の高いデータを供給しているところでございます。このあたりが当社と2社との違いというふうになっております。
Q2:競合の話が出たが、海外はどうか? そもそもクライアントは国内企業のみという理解で合っているか?
当社が主に展開するのは国内となっております。海外にも、当社と同じような形で展開されていらっしゃる会社はございます。ただ、先ほど申しましたように日本においては地殻変動という複雑な動きがあります。これが大陸ですと一定方向に動くので特に大きく影響しないんですけれども、日本においては4つのプレートなので、そのプレートが右にズレたり左にズレたり、あるいは上下に動いたり、いろんな方向性を示すわけですね。その方向性を示すことによって、その補正がうまくいかないと、結局、地図に合わない形になります。そこで当社はそういったバラバラに動くベクトルを含めてですね、それを正しく地図に合った位置に戻す特許技術もありまして、それは当社の強みの一つとなっております。
Q3:先ほど「対象となる市場を広げて、新たなビジネスパートナーとともに」とのことだったが、その辺りを改めて説明してほしい。
先ほど申しましたように当社のデータだけでは測れないということで、その機材というのが当然、必要となります。当社は今まで測量機器メーカーさんの販売店さんに対してデータ配信を行っています。つまり、測量機メーカーの販売店さんが販売される時に当社のデータが一緒に出ていくというようなイメージ。これは測量機器においては非常に重要なポイントでございまして、ほとんどの、その高精度な位置を必要とするお客様というのは、そういう販売店さんから買われるんですねで。そこに対して当社は提供することによって徐々にではありますけれども増えていくということでございます。
それから新規においてはKDDI様、それから日立産機システム様、こういった新しいビジネスパートナーを形成しておりまして、現在、新しい市場についてこの両者と今進めているところでございます。
先ほども申しましたけれども、今後はこの上場を機にですね、当社の知名度とか信頼度を上げることによって、さまざまなお客さまとの連携が可能となると感じておりますので、そこで新しいビジネスパーソナル形成によってさまざまな市場に対して当社の事業を拡大していきたいというふうに考えております。
Q4:すごい技術を持っていて、伸びそうな市場に身を置くにもかかわらず、業績の伸びがすごく堅実だなという印象。この傾向は続くのか?
現状の既存のサービスをやっている領域では、本当に高精度を必要とするところなんですね。そこというのは当社単体では、つまり、補正情報だけではどうしようもない、受ける側が必要なんですね。しかし、受ける側というのがそんなに大きく増えていかないんです。例えばパソコンに新しいソフトウエアを入れてパッと広がる、というような形ではないんですね。ですから、既存のところについては、やっぱり少しずつしか増えていかなくて、しかし今後の新しい分野のところはもっと早めに広がる可能性があるとは考えております。イメージはP41のグラフですね。ざっくりですけども、分かりやすい形にしたイメージでございますのでご参考いただけたらと思います。
Q5:今後の成長はP41の図でイメージしてほしい、とのことだが、見た目からは「将来的には現状の4倍くらいの売上を見込んでいる」と受け取れる。
実は当社のビジネスの業界におきまして業界団体とかが正確な数値を出しているというものがございませんで、ちょっと正確に物事を伝えることがむずしいんですけれども、一応、資料の中に市場規模などが出ております。P31あたりから、あくまで当社推定の数字ですが、このあたりから業界の広がり方の考え方がございますので、ご参考にしていただけたらと思います。
Q6:P42に「キャリアと競合」とある。要求精度が広くなることで、どういうことが起こるのか?
まず一つはですね、当社のデータというのは非常に安定して供給されているということがございます。ですので、誤差の振れ幅が少なくなります。もちろんそのモビリティーとか物流とかを含めて、その誤差の幅がどれぐらいかということはもちろんあると思うんですけれども、やっぱり状態が悪くなると非常に、突然データが悪くなったりすることがあるんですね。キャリアさんがお使いになってるっていうのは、1対1の、いわゆる基準点といわれるものから未知点(求めようとする点)というものを計測するものなんですけれども、これが距離が離れていくことによってデータが悪くなるんですね。当社は、その距離が長くなるという問題ではなく、非常に近いところで仮想基準点というものができます。そのことによって精度が安定しているということがございますので、その「安定した精度を」当社は提供していくということで差別化を図ってですね、そういった安定した精度を必要とされるお客様に対して当社は事業拡大していくということになるかと思います。
Q6: KDDIは競合でもあるし協業相手でもある?
いいえ。一緒にやらせていただいていますので。発表されてます、彼らが行う分野ですとかはサービスとしても発表、ローンチされていますので、そのあたりは一緒に今やってるところでございます。
Q7:売上高の伸び率について、先ほど5年平均で11.5%とのことでしたが、今期は6%弱と、今までの伸びから委縮している。要因は?
大体今までは10%ぐらいで来ているんですが、分母が少しずつ増えている部分はあるものの、去年の11%は結構、災害で使われるお客さまが多く、その用がちょっと多かったというのはあります。今期はその分がないので若干低めに予算も組んでおります。実際ちょうどそれぐらいの着地でいくのかなという見込みです。
Q8:業績の伸び方が手堅いのは「受け手の側の話」とのことだったが、受信機のメーカーとの関係で、という理解でよいのか?
今伸びが多いのは「ICT土木」「IT農業」とか、そういう情報化施工といわれる分野の方が多いんですけれども、そちらの方は、その機械にそういうシステムを、GPSなど機器をそこに付けて、動いている。付いていないと当社の配信が受けられませんので、そこが、新しい機械が出荷されるほどに、その部分だけちょっと伸びていっている。既存のところにそういう新しいシステムを後付けするというのもあるんですが、どうしてもやっぱり新しく出荷されるものに付いている、その伸びで、少しずつという形になっております。それが現状ですね。
Q9:クライアントの設備投資いかんによって、という意味合いか?
いや、いまはもうICT土木とか、それは国の施策としてやっていますので、今は全部大体ついている状況です。
Q10:キャリアつながりで。最近上場した会社が、人の流れをデータとして扱うといった事業を手掛けており、彼らはスマホの位置情報を使っている。そのようなマーケティングといったところにもデータが使われる可能性はあるのか?
高精度の位置情報を必要としてない分野だと思いますので、そういったビッグデータに関わるところについては当社の対象外となると思います。
Q11:まだ初値がついていない。ひとこと感想を。
投資家様の皆様のご期待の高さの表れだというふうに感じています。身が引き締まる思いでございます。当社といたしましては、今後も事業拡大、それから企業価値の向上に邁進してまいります。価格についてはマーケットが決めるということだと思いますので、当社としては事業を推進するということを第一に掲げて、今後も投資家の皆様のご期待に沿えるよう事業活動行っていきたいというふうに考えております。引き続きよろしくお願いいたします。
Q12:株主還元の方向性について。
当社は数年前から一応、配当を、実は上場前からやっておりますので、今期も同じような形で配当は考えてございます。当然、利益の状況などを鑑みて決定していきたいというふうに考えております。
Q13:既に技術開発は済んでおり、莫大な開発コストがこの先にかかるという事態は発生しない? 人も、パートナーが広めてくれるので拡大する必要はない?
はい、基本的には。いまの人数(16人)はぎりぎりなのでもう少し増やしますが。