エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビュー。今回はテックポイント(6697・東証グロース外国株)の日本拠点、テックポイントジャパン近藤浩社長。西新橋にある東京オフィスで話を聞いた。
【事業概要】
メインは車載カメラシステムおよび監視(防犯)カメラシステムという2つの市場に向けた映像受送信半導体の開発および販売。アナログ・デジタル混載技術を持っており、完成品メーカーの多様な要求に対応することが可能。世界5カ国に7事業拠点を設けている。
複数種類の機能別半導体を組み合わせた提案(トータルソリューション)をすることで、需要家である製品メーカーにおいては半導体相互の接続調整が容易になり、同社半導体にとっては“採用”機会が増えて、1案件当たりの販売数を拡大できるのが強み。
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――業態について教えてください。
米国シリコンバレーのファブレス半導体メーカーです。映像分野に集中し、ドライブレコーダー・カーナビ向け車載半導体、防犯カメラ向け半導体を、カメラメーカーを対象に製造販売しています。
一言で言えば「映像伝送に特化した半導体チップのメーカー」。ですから、ドラレコ、カーナビ、防犯カメラなどの完成品を売っているわけではありません。カメラ部と、表示・録画部とを、当社の映像伝送技術がつないでいます。
それぞれの完成品にロゴが付いているわけではありませんが、分解すると当社の半導体チップが現れますから、「テックポイント、入っている」という感じでしょうか。
――「強み」は?
事業の基盤はカメラの高画質映像を、表示部に遅れやノイズ、歪みなく送る技術です。具体的には、デジタル画像データを、伝送時に最適なアナログ信号に変換し、受信後の処理のためにデジタルデータに再変換する。ノイズ耐性が高く、長距離伝送が可能、圧縮遅延がないうえに、低コストでの配線が可能になるなど、複雑な処理ができるのが当社の技術の優位性です。
――市場や販売先の状況はどうでしょう。
車載カメラは安全水準の高度化で後方カメラやアラウンドビューなどで数量は増加傾向です。防犯カメラは都市安全の高度化で追加需要や交換需要が増加しています。
世界での販売先は中国が約70%と多いですが、これは機器メーカーの工場の多くが中国・台湾・韓国に立地しているというのが理由です。それらの工場で作られた製品は世界中のユーザーに向けて輸出され、製品は世界中で使用されています。つまり当社の半導体部品の出荷先は車載・防犯機器のメーカー工場、消費地は世界中ということです。実際、消費地としての中国の比率は約25%程度、消費地としての日本は15%程度となります。
――業績は?
コロナ禍の影響で世界的な供給不足の反動による世界的な半導体不況もありましたが、当社はドラレコ・カーナビなどの車載機器半導体の成長とともに事業を拡大してきました。今12月期は売上高102.4億円(前期比10.0%増)、営業利益24.56億円(前期比3・9%減)の見通しです。
減益予想の背景は研究開発費の増加(前期→10.18億円→14.56億円)。2025年からの本格的業績寄与を改革した過去最大の研究開発費となっているからです。今後の成長エンジンとなり得る戦略商品、他社への競争優位性をさらに大きくするための費用の増加ということを認識していただければ幸いです。
また22年から配当を開始しました。NON-GAAP純利益の約50%の配当性向をめどに配当を実施しています(前期は年間50セント)。
――今後の展開を教えてください。
「車載技術分野における技術確保を積極化」というシナリオです。過去最大の研究開発投資はAIを含む技術を用いたSoCの開発や送信側半導体(ISP+TX)などの低コスト化につながることを意図しています。「やっぱりテックポイント、入ってる」にご期待ください。